掌編小説集

572.ブラック企業って法律に違反している企業だけじゃないかもしれません。

生きる為には働かないといけないけれど、
選り好みしなければ働き口なんてたくさんあると言われるけれど、
とりあえず3年って根拠無く言われるけれど、
辞めたいなら辞めればいいとか言われるけれど、
コロコロ変わるよりはやっぱり長く勤めたい。
働き続ける為にはそれなりってのが必要になる。

結局入社して働いてみないと内実や実態が分からないこともあるけれど、
求人票とか面接とか口コミとか評判とかに起因するフレーズを気に掛けてもらいたい。
避けた方が無難というか、注意した方が良いというか、気を付けて欲しいというか。
ほんの一部ではありますが、この機会にご紹介いたします。

声を大にして言いたいのは、これだけでは決して完全なる判断は出来ないということ。
自分に合っていればホワイト企業で、自分に合わなかったからブラック企業ってことでも無いということ。
けれど、あれ?っていう違和感や直感は大事にしていただきたい。



『アットホームで家族のように、社員同士和気あいあいと仲が良い会社です。』
『何でも相談出来て分からないところがあればすぐに聞ける、風通しの良い会社です。』
『社員旅行、クラブ活動、レクリエーション、歓送迎会、懇親会等の飲み会、バーベキュー等の食事会など社内イベント多数。参加は自由ですが、ご家族も参加することが出来るので、親睦を深められます。』
『仕事もプライベートも全力投球です。』
『簡単なお茶出しがあります。』
『3時のおやつがあります。』

仕事とプライベートを公私混同して、ズカズカ踏み込んで来るかもしれません。
内輪ノリのなあなあな考えで、何でもかんでも聞いて干渉してくる仲良しこよしを求められるかもしれません。
一緒にや助け合いを協調性と強調してくるかもしれません。
自由参加は建前で、休日さえ返上してこき使われるかもしれません。
お客様だけではなく、自社の社員に対してもお茶を出したり、お菓子を買って来なくてはならないかもしれません。


『社長との距離が近くフラットな会社です。』
『同族経営、親族経営、オーナー企業』
『時代に囚われず、様々なことに挑戦しています。』
『密なミーティングや体操で心身ともに健康に気を使っています。』

距離が近すぎる故に、単なる責任者であるにも関わらず上から目線で接してくるかもしれません。
社長の身勝手な気分次第で、方針が180度変わるかもしれません。
ビジョンが希望のみで、現実的なデメリットを考えていないかもしれません。
仕事とは結び付かない朝礼や終礼、社訓を唱和したり、反省会と称して自己否定をさせてくるかもしれません。
身内に甘い傾向が基本なのかもしれません。
会社内でも家庭内でも独裁的な身内に対して最悪だと口にしていても、社員がワンマンを指摘しようものなら歯向かって来た敵と見なされ、排除する為に追い込まれるかもしれません。


『人材は人財であり、人柄を重視します。』
『未経験者歓迎、初心者歓迎』
『明るい雰囲気の職場です。』
『平均20代で若手中心の活気ある職場です。』
『勤続10~20年以上の社員が多数在籍しています。』

使い勝手の良い、都合の良い、そんな人を探したいだけかもしれません。
雑用や雑務ばかりで、未経験は未経験のままで終わってしまうかもしれません。
大人しさを暗い悪とされ、明るさを強制されるかもしれません。
すぐ辞めてしまうので、入社したばかりの新人社員やしがみついているベテラン社員しかおらず、中堅社員がいないのかもしれません。


『組織や部門強化の為の増員募集です。』
『少数精鋭の為、入社後すぐに実力を発揮出来ます。』
『将来の幹部候補生、管理職候補でこれからを担っていく重要な仕事を任せます。』
『一人当たりの裁量権が大きい仕事で達成感があります。』
『自分で考える力が身に付き、管理職にもなれます。』
『ジョブローテーションで様々なことを学ぶことが出来ます。』

増員どころか、実際は辞める人の引継ぎや辞めた人の穴埋めの為の募集かもしれません。
臨時でもない限り募集人数が従業員数に対して多すぎる時は、入れ替わりが激しいので最初から離職を見込んでいるからかもしれません。
人員不足で最低限の人数しかいない為、まともにOJTもしないまま一人で任されてしまうかもしれません。
入社後すぐに経験も無いまま、ベテラン同様の仕事量と重い責任を押し付けられ、責任を取らされるだけの立場になってしまうかもしれません。
上司の権限だけ大きく、次から次へとどんな職種の仕事もしなければならないかもしれません。
分業し過ぎてさわりだけしか学べずに、スキルやノウハウは身に付かないかもしれません。


『やる気や頑張りを評価します。』
『高収入、月収〇万円以上可能です。』
『年齢・経験・能力を考慮の上、当社規定により給与は決定します。』
『選考を通じて変動する可能性があります。』

目に見えない曖昧な評価基準の為、自分のお気に入りの言葉だけを信じて、評価を上げるどころか一方的に評価を下げられてしまうかもしれません。
過剰な仕事内容を課しておきながら仕事が遅いとか言われたことが出来ていないとか、問答無用に決め付けられて降格させられてしまうかもしれません。
給与の幅が広すぎても高い金額だったとしても、可能なだけであってたとえ未達成であったとしても嘘ではないと言われてしまうかもしれません。
基本給をよくよく確認しなければ、各種手当が盛り沢山に含まれているからこそ魅力的な金額になっているだけかもしれません。
決定事項と書けないということは、最終的に最低限になる可能性が大いにあるということかもしれません。


『これまでの経験や適性に合わせて採用配置します。』
『希望を考慮します。』
『ノルマはありません。』
『内勤にも関わらず自動車免許が必須条件』

適性は本当に適性で考慮してくれるとは限りませんし、適性があると思うとか考慮した結果とか言われてしまうかもしれません。
他社で経験はあるのにも関わらず、当社では経験不足と言われて任せてもらえないかもしれません。
表立ってのノルマは無いかもしれませんが、個人的だったりチームだったり自主的な目標を掲げて達成しなければならないかもしれません。
内勤でも必要不可欠な職種もありますが、公共交通機関を使わせなかったり運転手役で便利使いされたり、自動車免許を持っているということだけの理由で外回りや営業職へ配置転換させられるかもしれません。


『前向きに取り組む姿勢のある方を優遇します。』
『報連相が出来ない方は難しいです。』
『手を抜かずに仕事が出来る人は活躍出来ます。』
『決まった仕事を淡々とこなしたい方は向いていません。』
『自分の仕事だけが仕事ではありません。立場や役割の垣根を越えたチームワークが大切です。』
『親切で丁寧に教えて指導してくれます。』
『質問したい時に質問できて、手を止めて聞いて回答してくれます。』
『いつでも先輩を頼ってください。』
『社訓やビジョン・社長の挨拶などが社会人として働く上で、当たり前・常識・普通と思われることを大々的に掲げている』
『社会保険完備を目玉かのように標榜している』

わざわざ書いてあるということは、出来ていない可能性があるかそれくらいしないと出来ないということかもしれません。
自分の仕事以外もお手伝いではなく、自分の仕事としないといけないかもしれません。


『福利厚生が充実しています。』
『有給休暇の取得率100%です。』
『残業はありません。』
『残業は少なめです。』
『残業代は1分単位で全額支給します。』

制度がたくさんあって充実してはいても、使用するには条件があって実質使うことが出来ないかもしれません。
使える人が限られていて、その人の負担を別の人や使うことが出来ない人が担うことになるかもしれません。
有給休暇が自由ではなく、指定されているからかもしれません。
義務化された5日がもともと休日や休暇だったところに充てられてすり替わっているだけかもしれません。
取得出来たとしても、理由が必須かもしれません。
残業が無いのではなく、残業代が出ないだけかもしれません。
残業が少ないのではなく、残業を自主的な時間と置き換えているだけかもしれません。
1分単位が原則にも関わらず、さも良心的な企業であるかのように思わせようとしているのかもしれません。


『勉強会、研修制度、自己啓発、セミナー、資格取得制度が充実しています。』
『会社負担で無料、補助が受けられます。』
『自社社員教育制度があります。』

強制参加かもしれません。
資格を取れなければならないかもしれません。
条件が厳しいかもしれません。
有料のものがたくさんあって、提携企業に斡旋しているかもしれません。
自社でしか通用しない資格かもしれません。
他社での経験を無いものとされるかもしれません。


『フルリモートでどこでも仕事が出来ます。』
『リモートワーク可能です。』

携帯やパソコンは会社から貸与されないかもしれません。
通信費や水道光熱費・交通費を削減したいが為で、自己負担を強いられるかもしれません。
休日や深夜早朝に、緊急ではなかったり忘れない為だったりと相手の事を考えずに連絡してくるかもしれません。
手待時間を労働時間と認めないかもしれません。


『試用期間が契約社員になります。契約期間満了後、正社員として雇用します。』

何故契約社員で募集しないのかという疑念が捨てきれませんし、契約満了で終了になる可能性があるかもしれません。


『自席でお昼ご飯を食べることが出来ます。』
『制服貸与です。』
『私服勤務可能です。』
『綺麗なオフィスです。』
『整理整頓が行き届いています。』

お昼休憩時に自席にいるからといって電話番を押し付けられるかもしれません。
応接室が休憩室かもしれません。
私服が一般的なオフィスカジュアルでも、派手とか地味とか言われるかもしれません。
見えるところだけ綺麗で、見えないところは不衛生かもしれません。
着替える時間や社内外清掃が必須でありながら、勤務時間外にさせられるかもしれません。
お手洗いが綺麗でないかもしれません。
お手洗いが男女共同かもしれません。


『事業アピールばかりで肝心の仕事内容が薄い』

採用担当者が募集している職種の仕事内容を把握していないのかもしれません。
実際の仕事内容は到底記載出来ないことなのかもしれません。
凄い企業だと自慢したいだけかもしれません。


『土日・祝日・深夜帯でも面接可能です。』

求職者には有り難いけれど、採用時だけでなく日常的にもこの時間まで仕事をしているかもしれません。
可能というだけで時間が埋まっているとか理由を付けられて、現実には面接しないのかもしれません。


『年間休日数が記載されていない』
『社内カレンダーに準ずる』
『週休二日制(完全ではない)』
『育休取得実績あり』

休日や休暇が入社してみないと実態が掴めないので、事前に確認を怠ると齟齬が生まれてしまうかもしれません。
有給休暇が含まれていての日数かもしれません。
法定休暇・法定外休暇の日数が記載されていないと、実績があっても何日取得出来るのか分からないので不誠実かもしれません。


『固定残業』
『みなし労働時間制』
『変形労働時間制』
『裁量労働制』
『フレックスタイム制』
『シフト制』

勤務時間がバラバラになることが多く、社員同士の連絡が取りづらくなるかもしれません。
残業が無い場合も支給し超過分は別途支給しなければならないけれど、働かせ放題と勘違いしているかもしれません。
残業代を出しているのだからその分は働けと思われたり、残業代が出ているからその分だけ働かなければならないと思ってしまったりして、帰りづらくなるかもしれません。
割り増し賃金も含んで計算しなければならないけれど、最低賃金を下回っていることがあるかもしれません。
管理監督者は残業代が出ませんが、名ばかり管理職だったり管理者が管理監督者に該当しなかったりするのに、管理職という肩書だけで残業代が支払われないかもしれません。


『合否については、〇日後・〇週間後に連絡します。』
『書類選考通過者・採用内定者のみに連絡をします。』

採用担当者の負担を減らす為に不採用者への連絡を省略する旨が明記されていない場合、サイレントお祈りの企業になんて就職しなくて良かったのかもしれません。


『労働条件通知書がもらえない』
『常時10人以上の従業員がいるのに就業規則が無い』

労働基準法などの法律を理解していないか、軽視しているのかもしれません。



色々かもしれないと勝手を申しましたが、少しでもお役に立てれば幸いです。
< 572 / 664 >

この作品をシェア

pagetop