掌編小説集

577.スワッティングをアセテートで包んでビネガーにすれば「 」などトーキーにしなくてもミザンセーヌ

もういい
お前はもう戦わなくていい
生きていて欲しい
俺の娘だ
必ずお前の生きられる道を探してやる

そういつも悲しそうに言う
避けられない運命ならば尚更一緒に戦いたかったけれど
育ての親であっても娘と思ってくれていたからこそ気付いてしまったのかもしれない

私が最終的に死を選ぶことを
戦場で散ろうとしていることを
兵器でも守れるならば良かった
その為に皆が必死に守ってお膳立てしてくれている

だからあんなに性急に事を無理矢理進めてしまったのかもしれない
他人を軽視している訳じゃないけれどそれより私を重視してしまっただけ
だけど親が決意したのならば娘がそれを引き留めてしまうのは
身勝手な我儘でただの迷惑にしかならない

荒魂も和魂も幸魂も奇魂も願われているのが生ならば
喉元まで出かかった言えるわけがない言葉を呑み込む
出来るのならば迷惑ではなくて役に立ちたいから

日常の骸の上に有るささやかな非日常を続ける為の「I wish」
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