掌編小説集

578.陰になり日向になり。陰に陽に。

私はいつまで可哀想で小さな女の子なのだろうか?

稀代の兵器と言われ幼い私には荷が勝ちすぎていて
比率も比重もとても大きかったのかもしれないけれど
皆が私に出来ないことを引き受けてくれているならば
皆に出来ないことの全てを私が引き受けたかった
破壊の限りを尽くして屍を踏み越えてでもそれが最善策
味方も敵も淘汰されて残ったモノを一掃するそれが私の存在意義
守る為の兵器としてならば迷わず突っ込んでいけるから

そんな境遇は確かに可哀想なのかも知れないけれど
その中身は確かにただの子供でしかない
祝福されて産まれてきたのは嬉しかった
死を選べなかったのは悲しむと思ったから
生きてきたのは私が希望の象徴だったから
生きようと決めれたのはあの人が恨んでないと言ったから

あの人に言われたんだ

困っているのは貴女の方でしょう?
怪物として利用され続けてきた私達より兵器として守られ続けてきた貴女
私達のことまで気にして心配して配慮してこれ以上傷付かないで

私が困らせていると思っていたのに困っていたのは私の方だったみたい
私の力が皆を不幸にしていると思っていたから私はそれを背負う必要があると思っていた
私が傷付くのは兵器だから当たり前で皆が傷付かないように生きなければならないと思っていた
だけど私だって守られるべき存在なのだと教えてくれた

愛されて生まれてきて家族がいて友達がいて仲間がいて見守ってくれて
生きている内にこんなに幸せになっては向こうで顔向けが出来ないし合わせる顔がない
いやそうではないよね
たくさんの愛をもらって私は生きているのだから
やっと会えた時に幸せでなければいけないのだと気付かされた

だから今ここにいるの
力を分散させてコントロールしやすくしてかつ負担を少なくして協力してもらった
背中を預けられて隣に立って私がここにいることが出来ているのは皆のおかげ
生きることを望んだ私の我が儘を通させてもらった

守られたかったわけじゃない
私だって守りたかったから
兵器になりたかったわけじゃない
ありがとうと役に立ちたかったから
可哀想だからと言われたわけじゃない
良く出来たと褒められたかったから
託された親の願いを叶えたかったわけじゃない
嬉しそうな顔が見たかったから

無理をしたのは大それたことじゃない
私がしたくてしたことだから
心配しなくても大丈夫だから
もう謝らないで
私の行動を否定しないで
縛られているのはあなたの方

私は最初から幸せで不幸じゃなかった
あなたがいるからあなたも私の幸せの一部
皆がいるから大変になるんじゃない
皆がいたから幸せになれるんだ

幸せでも不幸でも兵器でも可哀想でも
幼くても成長しても守っても守られても
大人を喜ばせたかったただの子供だよ

どうしたら伝わりますか?
どうしたら不安は解消されますか?
どうすれば安心してくれますか?
そんなに私の愛は信用できませんか?

私は皆を守ったの
私は私を守ったの
ねぇ褒めてよ
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