掌編小説集

581.隠したい君の真相はキミを守りたい君からキミへの愛で消える

鉄格子‐ビル‐の間から見える空は何色だろうか?
沈黙を埋めるように雷鳴と雨音が響く中で
テトラポットの上を歩くように死にたいで繋ぐ僕と君だけの二人きりの時間
君の中の空白にひっそりと潜んで侵食していき
随分とご挨拶なことだと聞こえてくるやけに鮮明な黒影の息遣いこそ僕にとっては最重要
何も話さなくていいから私の傍にいてと君は何かを言って欲しそうに言う
かける言葉が見付からないから僕は君を抱き締めるだけ
喉仏に噛み付いてキスマークを付ける君の感情は戻らない方が苦しまないかもしれない
いや戻ったら戻ったで違う苦しみに襲われてしまうかもしれない
けれど戻らなくても方向転換してしまえば新たな苦しみを生んでしまうかもしれない
だからあの白線は越えてはいけない
私が行動することが一番だと君が判断しても相手に応えることは表面上出来たとしても
生きていく意味を考える時点で死にたくないってこと
君が不器用に笑いすぎて目尻に浮かんだ雫が零れた跡に落ちていく僕の想い
揺らぐ瞳が映し出す君の視界の中に歪んでいても僕の顔が見えていたらいいな
誰かが闇を創って君を閉じ込め僕を引きずり込んだ陰に一筋の光が指して影を作る
芙蓉‐エディション‐をくれたのは僕だと君は曼殊沙華‐テールランプ‐に飛び込む
代理受傷‐さようなら‐と別れを告げて二度と会えなくなってしまうのは君の願いが叶ったということ
君が不幸から遠ざけて幸せを願った人であるキミが良くなるということ
君の願いが叶うならばキミが君でなくなったとしても僕はそれで良い
君のいないキミであったとしても僕はそのすべてを歓迎しよう
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