掌編小説集

609.ウエストコートのノブレスオブリージュ

忍耐強く見守っていて尚且つ口を出さずにずっと目を離さず様子見
持っている多大な権力や影響力のある言動に応じて伴う
義務と責任を果たすのが上に立つ者の務めで忘れることなく果たしていく
チャンスを与えつつも厳しく接していると好意的
しかしながらその際どいやり方には騙して利用して壊してしまうという問題がある
いやいや節度ある範囲で軽妙にリメイクすることは否定できないけれど
全体の利益を優先するから時に一部にとっては非情な対応になってしまうだけ

雑で大胆だが堂々としているから疑われずにバレることはない
イジメではなくフザケていただけなのだから
どうやっても失敗する設計の策を選択し実行する

嘘を付いているとは言っていないしそう判断出来たとしても
隠していることはあるかもしれないしこちらの間違いかもしれない
信用していない訳ではないけれども信用もしきれていないから
憶測の域も想像の域も出ることが出来ない
死角はあるのだから機会はあったと考えられる
だから必ずやったとは限らずやってないとも言い切れない
けれどもそうとしか考えられないから疑いをかけざるを得ない

消去法で犯人にされては堪らないし冤罪の温床になってしまうから
けれど自分ではないと正直に言い張るしか術がなくて否定する材料が手元にない
投げかけられた目線だけで無言の圧力を感じて
疑問の余地がある違和感の予感が確信に変えられてしまう
そして責められる証拠から糾弾する証拠に状況を変えていって
本人に問いただすのが一番の近道と慎重に追及するも
仕掛けた罠‐ミスリード‐で供述に一貫性を失くしていく

責任を取る覚悟があるならば経過を逐一報告すれば行動しても良いってことではある
払える責任の代価と釣り合いが取れるならばですが
ただ今後の関係を鑑みると受け入れる方がよろしいかと思います
それでも拒否されますか?賢明なご判断を期待します

目を丸くされそうする事も可能だという金引く提案
言えない癒えない謂えない云えない
願いも期待も分かるから目指したいも辞めたいもなかなか言い出せなくて
ミスを切り捨てることも出来ずにただただ叱責を受け入れるしかない
立場を理不尽にしたのも望みを潰したのもここまで追い詰めたのも
間違っているのではなく使えないと怒りもしないで切り捨てられるのも
他でもない約束を破った自分自身が原因なのだから当然

何故黙っている?既に認めたことだろうと一つずつ追い詰められて
逃げ道を潰されて減衰し決定権を明け渡してしまった
歯の根が合わないぐらい怖かったけれど泣くほどに嫌だったけれど
放りだして逃げることが出来なくて反撃すら恐怖のあまり出来なくて
不慮の事故でも故意でも分かった様な口をきくなと叱られるものは叱られて
罪を認めることで捜査を打ち切ることが出来るから
支配などされていないトラウマが何度でも蘇りこの苦しみから逃れる為に心を捨てた

単純なミスの結果が単純にはならないから始末書は必須
どんなミスでも自覚させて原因を分析させて
どこまでも追及して事の重要性を理解させていく
責めることで追い込んで反省させる為に厳しく指導すれば
二度とミスを起こさないように防ぎ二度とミスなど起こさせないように教育

しかし別に席を準備しようかと店仕舞いみたく退去を命じられてしまえば終わり
加点方式は良いところを見付けることで私はあなたの良いところをたくさん見付けた
減点方式は悪いところを見付けることであなたは私の悪いところをたくさん見付けた
あなたの決めたことであなたの采配に間違いはないあなたの決定は絶対
叱られなければ匙を投げられて見捨てられた気分になってしまう
信用を失くして叱る価値もない子なんだって不安になってしまう
だからちゃんと良い子にしてるからちゃんと叱ってください
導いてくれるならば間違わずに役に立てるはずなのに
流石だと素晴らしい手腕だとあなたの目に素直な称賛と希望の光がある
あなたが褒めてくれるということはあの子がとても上の人間の役に立っている
それと同義だということを見付けたあの子はとても嬉しそうな顔をする
私もそんな風になりたいのに下手に磨きがかかる一方で居ても立ってもいられないから
帰る変える買える返る代える換える反る還る飼える替える孵る交える蛙

失った判断力と今ある感情
内側から崩すか外側から叩き潰すか
慕わなくていいから崇めろと闇の巣窟で信仰の心臓が受け継がれていく
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