掌編小説集

615.穏当な素地は顕現に馬脚を露わした奴に健勝を破壊され隔意を生む

「冷たい人間と自覚しろ」

「人間失格」

「育て方を間違えた」

そう言われてなんで優しくしてもらえると思っているんだろうか

言おうと考え構えて出た言葉じゃなく

考えを一度天秤で量った方がいいようなこともなく

想いが溢れて思わず言ってしまった言葉

無意識的なその行動は普段からの意識的な行動の裏返し

「ごめんなさい」と言えと強要するくせに

自分は「言い方が悪かった」だけ

厳しく強い言い方だっただけで怒鳴り散らしたりしていない

全てを認めているのだから下手に刺激するのは得策ではないとばかりに

反論しかけた口を閉ざす

失望が恨みに一瞬で変わって

反論する気力も体力も時間も勿体ない

それは謝罪にはならないから

静める五十里に碇を沈め怒りの錨を鎮める

根に持つことには定評がある私です
< 615 / 664 >

この作品をシェア

pagetop