掌編小説集

637.シーリングスタンプの紙吹雪

君の雰囲気が変わったと感じる
もちろん良い意味で
カービングみたいな感じからホージングみたいな感じへ
纏う空気がふんわりと優しくなった気がするのは気の所為ではないだろう

君が自分から望んで何か行動することが少ないから
俺は嬉しくなって君の申し出を承諾してしまったけれど
君が足りなくて君が欲しくて君の中で果てたくて
気持ち良く無かったですか?なんて言われた時には理性の糸が切れそうになって
下からのアングルはクセになってハマってしまいそうで
柄にも無く浮かれていた俺はその理由を深く考えてはいなかった

初めに比べたらシンコペートも結構上手くなって
それはもう男の沽券に関わるぐらいに
だから離してくれなくて堪らず吐き出した欲を飲んだことに戸惑って驚いてしまった
その瞬間ピシッと君と君が纏う空気が凍ってごめんなさいと言って部屋を出て行った
遠ざかって途絶えた足音にハッとして混乱を片隅に追いやって駆け出す

吊り橋理論を利用して思いとどまらせて君のコンフォートゾーンとして気を許せる存在に
やっと寛解に近付いてきたと思っていたのに揺り戻してしまった
周りに人がいても解決出来ないから見届けるぐらいしか出来なくて手伝ってはくれたけれど
数値化して可視化して感覚で対処せずに全て終わらせれば楽になれると
語らず描かず闇雲に動いているように見せ掛けて真の目的を隠していたあの時の様に
オンビートとオフビートの様にセッションの濃淡はハッキリしていて
お返しなんてされたらもう会えなくなりそうでこれ以上好きになりたくないから
エディブルフラワーと化したいと俺が願ってしまうくらいに
キョトンとした表情で首を傾げ存命を切り捨てようとデフォルトで決めていたあの頃へ

追い掛けようとして部屋から出ると廊下の隅に小さく丸まっていて
動悸と荒くなった息を整えるように短く息を吐いてタオルケットを取ってくる
君にかけてそのまま包み込むとピクッと体が動いたけれど体育座りのまま顔を上げてはくれない
独りよがりで自分勝手な私が悪いだけで何でもありませんから
名前を呼んでも理由を尋ねても君の口からは謝る言葉しか出てこない
何でも無かったらこんな風には泣かないと思いますよ
問い詰めるような口調になってしまったかもしれないけれど
功を奏したようでポツリポツリと話し始めてくれる
おんぶにだっこのマグロだと思い込んで俺の為に頑張ろうとしてくれた
押し殺した低い吐息も一際気持ち良さげな顔もとても嬉しくて
調子に乗ってもうちょっとって思っていたら調子に乗り過ぎたということらしい

堰を切った暴走も感情の成長の一部であり対連合学習のアンダーパス
ダイジェストで考えても痒い所に手が届くような押しも押されもせぬ
仕事‐カストーディアル‐ぶりの君にしては乱雑で均整が取れていなくて珍しく
信頼出来る筋からでもなく相談出来るツテも無くネットでつぶさに見聞きした
得体の知れない先鋭で不確かな情報に頼って鵜呑みにして
いかなる時も油断大敵とそれでも提案に乗る事にした囲碁のツケ

誰もが夢見る‐ハシタナイ‐世界で自分だけが真実‐フシダラ‐を見ていると
経験者は語るとばかりに内部事情に詳しいのを装ってクレクレと揺さぶりをかけるように
ギスギスした貴賤で愚陋な荒らし行為‐コミュニティ‐
世間話から情報を吸い取る詐欺師の狩り場‐アポカリプスのブレーンストーミング‐
自分が自分の為に叶えられなくて出来なかった事を他人の事情を借りて憂さ晴らししてストレス発散
暴力では証言を認めさせたり否定したり出来ないのに出来なければ裏切り行為と見做し
それぞれお互いの立場で考え様々な対立を生んで無いはずの記憶と戦っている気がするスケール感

ダウンロードしてインストールしてログを解析して実装して
シュチュエーションの真似をしたのではなく学んで理論上出来ると
インクラインに沿うしか出来ないのは俯いている時に出会ったから
全てを終わらせて前を向き始めたと思えば離れてゆきそうだから
確証を持つことが出来ない情報で徒に混乱させるつもりはないと
それから先の話を断り話題を強制終了されなくて良かったけれど
情報が多いのも考えもので捜査網から溢れ出ないように精査しなければならない
何かトラブル?私のことはいいからとすぐに俺の予定を優先して
ガヤガヤもザワザワもザーもワーもどんな種類の雑音も耳に入らないぐらい
自分の気持ちよりも俺が喜ぶかどうか悲しまないかどうかだけを気にしている

導き出した推理が新たな疑念を呼び正しい答えが遠ざかる
安全に配慮しながら実施していますとか放送内容を一部変更してお送りしますとか
この時はまだ知らなかったのですとか会員制をいいことに
奇遇を装って意気投合して軸足で献酒を蹴り飛ばして象意さえシュリンク
失敗したら認めたっていい失敗を許せるようになればいい
失敗したとしても挑戦を取り上げられずに成功するまで続けられることこそ
君の良さは顔も知らない奴らの承認欲求‐ランドマーク‐と奴らの扁額‐イイネ‐では分からないし
一瞬を永遠に残したいとはいえ残るのが良いものだけとは限らないから
不確かな世界で生きて声を上げた人が苦しんだままにはさせないと
様々な影響を受けやすくて実行も出来てしまって純粋過ぎて危なっかしい
無関係でも同一でも首根っ子を押さえてヤキを入れたくなるのは君のことだから

感情が豊かになった分俺の機微に敏感になり優生思想になりセンシティブになった気もする
酷く心配そうな目で態度で君の側にいる自覚はあるけれども
そんなことで俺は離れたりしないしいくら忙しくても君といる時間くらい取ってみせる
俺ならここにいるから大丈夫だから側にいるから

同じあやふやな言葉ならばネットなんかの言葉よりも目の前に居る俺の言葉を信じてくれませんか
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