掌編小説集
643.ホールマークの隙を突く
兄貴と喧嘩したらしくプチ家出ついでに突撃しに来た君
手土産にしてはスパルタで寝酒にしては火に油を注ぐラインナップ
アール・デコ調の筐体と汗牛充棟のハーモニーで抑揚も面白味も無い部屋
君は気にしていないどころか寧ろ落ち着くとか言っていて精神年齢が昔から高い
両親が多忙で面倒見の良い兄貴
両親が亡くなってからは親代わりも兼ねた兄貴
彼女が出来ても君に何かあれば飛んでいった兄貴
いつだって君にフォーカスしていた兄貴
兄貴が自分の幸せや彼女を心置き無く追えるように
自分が幸せになることで兄貴を安心させることが出来ると思って彼氏を欲しがった君
彼氏が出来ても強面でシスコンの兄貴を怖がって
怖くないと力説すればする程に信用が無くなって別れてしまう
だから偶然再会した俺らの元担任に良い人を紹介して欲しいと
いくら焼きが回ったところで強面でそっち方面のお友達が多いからと
そういう人達なら兄貴を怖がらないし元担任の知り合いなら安心出来ると
絶好の機会が訪れたと思ったのに肝心の兄貴には駄目だと邪魔をされたらしい
持ってきた袋から中身を出しながら言い方は可愛いけれどプリプリと怒っている
原資を並べて準備万端で座れとばかりに隣の席をペチペチと軽く叩く
ハイハイと合いの手を入れて苦笑いしながら用意した食器と共に座る
しかし初頭効果が続く結果論としても兄貴の判断は正しい
元担任の協力は非常に強力すぎるから簡単に乗ってはならない
日和見な教師の中で異体字な担任はピリピリした空気の偽企画で周囲を包囲
インナーチャイルドにドスを突き付けて餞別とばかりにドゥードリング
攻撃して自己承認の回復を図る人達から助けてくれた親友‐ブロマンス‐な兄貴
真偽の程が定かではないことを同定可能性で流布してクリック音で故殺する
言い逃れする為にあえてそう行動した可能性を指摘されてパクっている?
いやいや同じ意見なだけで自分の足で立てないから人を助けることで満足感を得ていると
誰も彼もが完璧に近い人間だと自負しているけれどその実不完全なAIでしかない
毎日が解釈の違いに満ちていて一つ間違えると怒りを買ってしまうのではないかと
終始緊張している必要がある環境で没個性化現象を除け者へと集団思考
ミルグラム効果とルシファー効果の合せ技で傍観者効果を増幅
謙遜する必要は全く無い何故なら褒める人間なんか誰も露程も居ないから
天下人へ鋭利なグライドスロープでMSAWが響(どよめ)いて
ILSもDMEも聖地巡礼に不正アクセスでは計算が狂ってしまって失速
ダイヤルアップ接続でコンバートして応答願いますと願っても取っ払いでは
気付かないうちに兼ね合いを試されていたのならば帰参の一因になりはしない
意見の言えない性分だけれどその分人の意見を聞けるとカウンセラーに向いている
ポーターのように襷を繋げと無責任に力強く言ってくれた有難味は今だから分かる
被害者遺族と加害者家族の為に追悼の意を表する専門家が集まってチームを作って
コンプレックスを否定して自己肯定をしてくれる揺るがない存在でいられるから
心の中で反論しただけなのにまるでそれが聞こえていたかのような反応をすると
さすが分かっているとご機嫌にただの感謝だというのに酷く思わせぶり
そりゃずっと見てきましたから
お気になさらずにと存在感を消せば消すほど気になって増し増しになる
気持ちなどただの脳からの信号で自分に対して他人事だったのに
兄貴の後ろをポテポテと付いて回っていた小さな君が懐いてくれて
大切な者が関わる時の君自身の欲なんて行動に移す前にブレーキが働いて
あっさりと諦めるぐらいに危ない真似も厭わないぐらいに兄貴が大好き
成長を感じることで離れていく寂しさを感じつつ大人の厚みが増しても
可愛い可愛い妹のままでいつまで経っても隠れ家的で心配性な兄貴
君がかかっている時の兄貴は白眼視でマジで怖いから仕方がない
空より高く海より深い兄妹の愛情に物分かり良く分別のある行動を心掛ける
頭をポンポンとして撫でれば子供扱いしないでと
乗せた手を払われて頬をぷくーっと膨らせてプンスカと怒られてしまった
勢いそのままに負けたら勝った方の言うことを何でも一つ聞くこと
君は意気揚々と勝負の賭けを提案したけれど結局俺が勝って君は拗ねてしまう
俺も酒が入って大人気なかったとは思うけれど手加減をしたらしたで拗ねるから
君には歳上としては勿論男としても失望されたくないし良いところも見せたい
頼られると良い人でいたくて心が狭いだなんて思われたくなくて
いつもジルコンのように笑っていて欲しいから君のオネガイは断れない
守りきるか射止めるか熱意が通じるか奪っていくか
付き合ってなんて言えなくて考えさせてと言うしか有耶無耶にする術が無かった
飲むペース早くない?と度数が低いとはいえと思って問えば無礼講だと意味不明な返答で
しょうがないから酒を取り上げようとすれば取られまいとしてポカポカと殴られる
力は入っていないものの無遠慮だから地味に結構痛い
今夜は帰りたくないと言われて帰さないと言えたらどんなに良いだろう
俺に向けられるその言葉達には何の含みもないことは明らかだ
そうでなければノコノコと酔っ払ってこんな無防備にはならないから
飲みすぎたのか文句を吐き出してスッキリしたのか結局君は寝てしまった
毛布をかけてスヤスヤと寝息を立てているあまりにも無防備な寝顔に癒されていると
無意識に頭を撫でていて兄貴と間違えたのだろう寝ぼけてガシッと抱き付かれる
ずっと一緒に居たいと愛のある無視でひっつく腕に力を籠めるささやかな抵抗
息遣いや体温が鮮明に感じられるこの体勢は非常にまずい
背徳感を刺激され無茶苦茶にしたくてたまらないと湧き上がって来た衝動を堪える
何とか引き剥がすのに成功し距離を十分に取って壁に背中を預けズルズルと座り込む
理性を総動員で勢揃いさせて耐えた俺超偉いと自画自賛したくなるほどだ
勘弁してくれ
どさくさに紛れて寝込みを襲うなんてことは絶対にしたくない
想いの線引きをラインをキッチリ引いて一定の距離感を保ってきた
それでなくても親友として信用してくれている兄貴の妹に手を出して水の泡なんてお断りだ
喉から手が出るほどの猛烈な手の内を見せたら最後
この関係はきっと終わってしまうからこの想いはトップシークレット
誰かのモノを好きになったら厄介で返せと言われても困ることになるのは俺の方
当たって砕ける勇気は無くて関係が変わるのならばこのままで良い寧ろこのままが良い
けれど愚痴をこぼしに来るぐらいには頼られていると思っていいのだろうか
望みを完全に自覚してそれでもこのまま貫くことが本当に君にとって良いことなのか
俺のことだけを考えてと思ってしまうからそれを君がどう思うのかと迷いが生じて
君に求められていないから引いているだけで本音では俺を望んで欲しいと願っている
男を簡単に家に上げんな男の家に簡単に上がるなと
口を酸っぱくして言っていた兄貴も耳に胼胝が出来るほどに聞かされていた君も
一応俺も一人暮らしの男の部屋で君一人で来るようなところでもないのは明白なのに
ちょっとぐらい意識してくれてもいいんじゃないかと叫びたくなる
いや寧ろ少しは期待していいのか
兄貴を怖がらないのが条件なら俺はその条件にバッチリ当てはまる
誰かの手を取るのならば俺の手を取って欲しい
兄貴に迎えを頼む電話をすればきっと疑問を全部封じ込めたような返事が来るだろう
言い寄って来る奴等は片っ端から叩き潰しても君には傷一つ付けないし
参戦する責任なら全て取るから安心してと言えば兄貴は安心するだろうか
そんな物騒なことを言うなんてとてもじゃないけれど安心なんて出来ないと
仕方がなさそうにそれでもきっと笑いながら君は言ってくれるだろうか
君と恋をしたいけれど君に愛されたいけれど
君の彼氏になりたいけれど君を彼女にしたいけれど
君の夫と名乗りたいけれど君を妻と呼びたいけれど
俺は君とだけじゃなく兄貴ごと家族になりたい
手土産にしてはスパルタで寝酒にしては火に油を注ぐラインナップ
アール・デコ調の筐体と汗牛充棟のハーモニーで抑揚も面白味も無い部屋
君は気にしていないどころか寧ろ落ち着くとか言っていて精神年齢が昔から高い
両親が多忙で面倒見の良い兄貴
両親が亡くなってからは親代わりも兼ねた兄貴
彼女が出来ても君に何かあれば飛んでいった兄貴
いつだって君にフォーカスしていた兄貴
兄貴が自分の幸せや彼女を心置き無く追えるように
自分が幸せになることで兄貴を安心させることが出来ると思って彼氏を欲しがった君
彼氏が出来ても強面でシスコンの兄貴を怖がって
怖くないと力説すればする程に信用が無くなって別れてしまう
だから偶然再会した俺らの元担任に良い人を紹介して欲しいと
いくら焼きが回ったところで強面でそっち方面のお友達が多いからと
そういう人達なら兄貴を怖がらないし元担任の知り合いなら安心出来ると
絶好の機会が訪れたと思ったのに肝心の兄貴には駄目だと邪魔をされたらしい
持ってきた袋から中身を出しながら言い方は可愛いけれどプリプリと怒っている
原資を並べて準備万端で座れとばかりに隣の席をペチペチと軽く叩く
ハイハイと合いの手を入れて苦笑いしながら用意した食器と共に座る
しかし初頭効果が続く結果論としても兄貴の判断は正しい
元担任の協力は非常に強力すぎるから簡単に乗ってはならない
日和見な教師の中で異体字な担任はピリピリした空気の偽企画で周囲を包囲
インナーチャイルドにドスを突き付けて餞別とばかりにドゥードリング
攻撃して自己承認の回復を図る人達から助けてくれた親友‐ブロマンス‐な兄貴
真偽の程が定かではないことを同定可能性で流布してクリック音で故殺する
言い逃れする為にあえてそう行動した可能性を指摘されてパクっている?
いやいや同じ意見なだけで自分の足で立てないから人を助けることで満足感を得ていると
誰も彼もが完璧に近い人間だと自負しているけれどその実不完全なAIでしかない
毎日が解釈の違いに満ちていて一つ間違えると怒りを買ってしまうのではないかと
終始緊張している必要がある環境で没個性化現象を除け者へと集団思考
ミルグラム効果とルシファー効果の合せ技で傍観者効果を増幅
謙遜する必要は全く無い何故なら褒める人間なんか誰も露程も居ないから
天下人へ鋭利なグライドスロープでMSAWが響(どよめ)いて
ILSもDMEも聖地巡礼に不正アクセスでは計算が狂ってしまって失速
ダイヤルアップ接続でコンバートして応答願いますと願っても取っ払いでは
気付かないうちに兼ね合いを試されていたのならば帰参の一因になりはしない
意見の言えない性分だけれどその分人の意見を聞けるとカウンセラーに向いている
ポーターのように襷を繋げと無責任に力強く言ってくれた有難味は今だから分かる
被害者遺族と加害者家族の為に追悼の意を表する専門家が集まってチームを作って
コンプレックスを否定して自己肯定をしてくれる揺るがない存在でいられるから
心の中で反論しただけなのにまるでそれが聞こえていたかのような反応をすると
さすが分かっているとご機嫌にただの感謝だというのに酷く思わせぶり
そりゃずっと見てきましたから
お気になさらずにと存在感を消せば消すほど気になって増し増しになる
気持ちなどただの脳からの信号で自分に対して他人事だったのに
兄貴の後ろをポテポテと付いて回っていた小さな君が懐いてくれて
大切な者が関わる時の君自身の欲なんて行動に移す前にブレーキが働いて
あっさりと諦めるぐらいに危ない真似も厭わないぐらいに兄貴が大好き
成長を感じることで離れていく寂しさを感じつつ大人の厚みが増しても
可愛い可愛い妹のままでいつまで経っても隠れ家的で心配性な兄貴
君がかかっている時の兄貴は白眼視でマジで怖いから仕方がない
空より高く海より深い兄妹の愛情に物分かり良く分別のある行動を心掛ける
頭をポンポンとして撫でれば子供扱いしないでと
乗せた手を払われて頬をぷくーっと膨らせてプンスカと怒られてしまった
勢いそのままに負けたら勝った方の言うことを何でも一つ聞くこと
君は意気揚々と勝負の賭けを提案したけれど結局俺が勝って君は拗ねてしまう
俺も酒が入って大人気なかったとは思うけれど手加減をしたらしたで拗ねるから
君には歳上としては勿論男としても失望されたくないし良いところも見せたい
頼られると良い人でいたくて心が狭いだなんて思われたくなくて
いつもジルコンのように笑っていて欲しいから君のオネガイは断れない
守りきるか射止めるか熱意が通じるか奪っていくか
付き合ってなんて言えなくて考えさせてと言うしか有耶無耶にする術が無かった
飲むペース早くない?と度数が低いとはいえと思って問えば無礼講だと意味不明な返答で
しょうがないから酒を取り上げようとすれば取られまいとしてポカポカと殴られる
力は入っていないものの無遠慮だから地味に結構痛い
今夜は帰りたくないと言われて帰さないと言えたらどんなに良いだろう
俺に向けられるその言葉達には何の含みもないことは明らかだ
そうでなければノコノコと酔っ払ってこんな無防備にはならないから
飲みすぎたのか文句を吐き出してスッキリしたのか結局君は寝てしまった
毛布をかけてスヤスヤと寝息を立てているあまりにも無防備な寝顔に癒されていると
無意識に頭を撫でていて兄貴と間違えたのだろう寝ぼけてガシッと抱き付かれる
ずっと一緒に居たいと愛のある無視でひっつく腕に力を籠めるささやかな抵抗
息遣いや体温が鮮明に感じられるこの体勢は非常にまずい
背徳感を刺激され無茶苦茶にしたくてたまらないと湧き上がって来た衝動を堪える
何とか引き剥がすのに成功し距離を十分に取って壁に背中を預けズルズルと座り込む
理性を総動員で勢揃いさせて耐えた俺超偉いと自画自賛したくなるほどだ
勘弁してくれ
どさくさに紛れて寝込みを襲うなんてことは絶対にしたくない
想いの線引きをラインをキッチリ引いて一定の距離感を保ってきた
それでなくても親友として信用してくれている兄貴の妹に手を出して水の泡なんてお断りだ
喉から手が出るほどの猛烈な手の内を見せたら最後
この関係はきっと終わってしまうからこの想いはトップシークレット
誰かのモノを好きになったら厄介で返せと言われても困ることになるのは俺の方
当たって砕ける勇気は無くて関係が変わるのならばこのままで良い寧ろこのままが良い
けれど愚痴をこぼしに来るぐらいには頼られていると思っていいのだろうか
望みを完全に自覚してそれでもこのまま貫くことが本当に君にとって良いことなのか
俺のことだけを考えてと思ってしまうからそれを君がどう思うのかと迷いが生じて
君に求められていないから引いているだけで本音では俺を望んで欲しいと願っている
男を簡単に家に上げんな男の家に簡単に上がるなと
口を酸っぱくして言っていた兄貴も耳に胼胝が出来るほどに聞かされていた君も
一応俺も一人暮らしの男の部屋で君一人で来るようなところでもないのは明白なのに
ちょっとぐらい意識してくれてもいいんじゃないかと叫びたくなる
いや寧ろ少しは期待していいのか
兄貴を怖がらないのが条件なら俺はその条件にバッチリ当てはまる
誰かの手を取るのならば俺の手を取って欲しい
兄貴に迎えを頼む電話をすればきっと疑問を全部封じ込めたような返事が来るだろう
言い寄って来る奴等は片っ端から叩き潰しても君には傷一つ付けないし
参戦する責任なら全て取るから安心してと言えば兄貴は安心するだろうか
そんな物騒なことを言うなんてとてもじゃないけれど安心なんて出来ないと
仕方がなさそうにそれでもきっと笑いながら君は言ってくれるだろうか
君と恋をしたいけれど君に愛されたいけれど
君の彼氏になりたいけれど君を彼女にしたいけれど
君の夫と名乗りたいけれど君を妻と呼びたいけれど
俺は君とだけじゃなく兄貴ごと家族になりたい