掌編小説集
647.チュベローズに酔う
夢を見たとても幸せな夢
俺が好きになってもらえるように努力しますから
その結果君が俺を好きにならなくても
それは俺の努力不足なだけで君のせいじゃないから安心して
見返りとか利害とか何かを期待して一緒にいたいんじゃないから
君が自分でそう思えないのならば俺が言ってあげる
よく頑張りましたと
重かった気分をスッと持ち上げてくれたように
少し軽くなった気分の心地で
一緒に傷付いて怒って泣いてくれた
当事者の私よりも彼の方が当事者らしかった
過去は離れていき未来は近くなるけれども今だって無くなるわけじゃない
良いことも悪いことも全部生きた証だからと
止まってしまった私の時間の針を動かしたのは彼で
固執せず自分の幸せを最優先にしてと私に望んだのも彼で
私は彼の望み通りに固執せず生きることに決めた
彼の好意に甘えるのを卒業して
受け入れて浸透して私自身からも湧き出てきて
一緒に寝れば朝起きた時も一緒だったことに
安堵以外に嬉しさが込み上げてくる
そんな時に見た夢
彼との結婚式の夢
友達と同僚に祝福されている中で
初恋の人に彼を紹介する夢
私のせいで亡くなってしまった初恋の人が
誰よりも祝福してくれている夢
初恋の人に彼と出逢えて幸せだと笑顔で言えた夢
目が覚めれば現実ではあるけれども
初恋の人がいない世の中ではあるけれども
彼が隣にいる日常である
何やら寝言を言っていたようで
何の夢を見ていたの?と聞かれたけれど
彼に言うのが恥ずかしかったから
覚えていないと誤魔化したら
そうなんだと言ってそれ以上問い詰められはしなくて
喧嘩にもならなかったけれど
言い回しが下手で私でも察してしまう不機嫌さ
仕事中も隠しているつもりでも同僚達にはバレバレで
彼の直の先輩が気を使って彼を飲みに誘っていた
初恋の人の名前と幸せという寝言
初恋の人とデートでもしていたんだろうか
初恋の人は亡くなっているから
焼け木杭に火が付くなんてことは無いけれど
気持ちがぶり返すことはあるだろうと心配になる
だって死んだ人には敵わない
身代わりで消そうとすればする程
身代りの存在があることで本物の存在感が増していく
思いも考えも変わるけれども
届かなかった残る想いも含めて決して消えたりしない
帰らぬ人は去った人ではなく永遠に居座る人だから
君に何と言えば良いか分からなくて
この気持ちをぶつけたくはなくて
顔も合わせづらいから避けるように
やけ酒に愚痴に直の先輩を付き合わせて
一気飲みして怒られて取り上げられたけれど
ベロベロに酔っ払ってタクシーを断って
大丈夫大丈夫と繰り返して一人家に帰ったはず
夜中に呼び鈴が鳴る
こんな時間に誰だろうと考える前に
ピンポンピンポンと連打され名前を大声で叫ばれる
近所迷惑だと頭をかかえながら
玄関の扉を開ければドアノブに掛けた手を取られ
酔っ払いとは思えないほどの素早さで
鍵を掛け靴も脱いで完璧な装いで
部屋に連れ込まれて壁に押し付けられて
逃げ場もなく縫いとめられて
今朝の寝言の件を再度問い詰められる
言い淀めばと視界が陰り降ってきたのは口付けで
反射的に目を閉じればたやすく唇をこじ開けられ
深く唇を重ねつつも強引にねじ込まれる
普段の彼らしからぬ性急な動きに
苦しくて息を吸おうとするとすぐさま塞がれて
呼吸が満足に出来なくて酸素が十分に吸えなくて
息が上がって次第に頭がぼーっとしてくる
口内をたっぷりと堪能してようやく唇を離してくれた
私をベッドに押し倒した彼をぼんやりと見上げる
彼の顔が間近に迫ってきて床もベッドも軋む音がする
酔った勢いで暴走なんて彼は後悔しそうだなと
頭の片隅で思いながらも拒む気にはなれないから
私は理由の疑問をスルーしてされるがまま
遠慮がなくなったように快楽に浸る彼は無防備で幼い
素直で可愛い尻尾フリフリな大型犬が
ぴっちり被っていた仮面を脱ぎ捨てて
隠していた野性味を剥き出しにして
急に本性を現したような迫力のある笑みに
嬉しさを感じる私は悪い女だろうか
次の日彼は目覚めるとまるっと記憶がないようで
私の家に居る理由も私にしたことも
覚えているのは直の先輩と飲んで
店の前で別れて家に帰ろうとしたところまで
身体目的と思われて嫌われたら立ち直れないから
当面の間は接触禁止を徹底して証明する
君に良いって言われるまで指一本触れないから
せめてものお詫びだという宣言と謝罪をされたけれど
覚えてもいないことで謝られても仕方がないから
でも無理矢理だった
まあ強引だったけれど無理矢理ではないよ
嫌だったら本気で抵抗するから
しょげる彼を慰める私は完全に主導権を握っている
夢の話をすれば言いたくなかった理由を言えば
彼はまた笑ってくれて元の元気な彼に戻るだろうか
その前に当て外れで八つ当たりなんて最悪だと
落ち込んでしまうかもしれないね
俺が好きになってもらえるように努力しますから
その結果君が俺を好きにならなくても
それは俺の努力不足なだけで君のせいじゃないから安心して
見返りとか利害とか何かを期待して一緒にいたいんじゃないから
君が自分でそう思えないのならば俺が言ってあげる
よく頑張りましたと
重かった気分をスッと持ち上げてくれたように
少し軽くなった気分の心地で
一緒に傷付いて怒って泣いてくれた
当事者の私よりも彼の方が当事者らしかった
過去は離れていき未来は近くなるけれども今だって無くなるわけじゃない
良いことも悪いことも全部生きた証だからと
止まってしまった私の時間の針を動かしたのは彼で
固執せず自分の幸せを最優先にしてと私に望んだのも彼で
私は彼の望み通りに固執せず生きることに決めた
彼の好意に甘えるのを卒業して
受け入れて浸透して私自身からも湧き出てきて
一緒に寝れば朝起きた時も一緒だったことに
安堵以外に嬉しさが込み上げてくる
そんな時に見た夢
彼との結婚式の夢
友達と同僚に祝福されている中で
初恋の人に彼を紹介する夢
私のせいで亡くなってしまった初恋の人が
誰よりも祝福してくれている夢
初恋の人に彼と出逢えて幸せだと笑顔で言えた夢
目が覚めれば現実ではあるけれども
初恋の人がいない世の中ではあるけれども
彼が隣にいる日常である
何やら寝言を言っていたようで
何の夢を見ていたの?と聞かれたけれど
彼に言うのが恥ずかしかったから
覚えていないと誤魔化したら
そうなんだと言ってそれ以上問い詰められはしなくて
喧嘩にもならなかったけれど
言い回しが下手で私でも察してしまう不機嫌さ
仕事中も隠しているつもりでも同僚達にはバレバレで
彼の直の先輩が気を使って彼を飲みに誘っていた
初恋の人の名前と幸せという寝言
初恋の人とデートでもしていたんだろうか
初恋の人は亡くなっているから
焼け木杭に火が付くなんてことは無いけれど
気持ちがぶり返すことはあるだろうと心配になる
だって死んだ人には敵わない
身代わりで消そうとすればする程
身代りの存在があることで本物の存在感が増していく
思いも考えも変わるけれども
届かなかった残る想いも含めて決して消えたりしない
帰らぬ人は去った人ではなく永遠に居座る人だから
君に何と言えば良いか分からなくて
この気持ちをぶつけたくはなくて
顔も合わせづらいから避けるように
やけ酒に愚痴に直の先輩を付き合わせて
一気飲みして怒られて取り上げられたけれど
ベロベロに酔っ払ってタクシーを断って
大丈夫大丈夫と繰り返して一人家に帰ったはず
夜中に呼び鈴が鳴る
こんな時間に誰だろうと考える前に
ピンポンピンポンと連打され名前を大声で叫ばれる
近所迷惑だと頭をかかえながら
玄関の扉を開ければドアノブに掛けた手を取られ
酔っ払いとは思えないほどの素早さで
鍵を掛け靴も脱いで完璧な装いで
部屋に連れ込まれて壁に押し付けられて
逃げ場もなく縫いとめられて
今朝の寝言の件を再度問い詰められる
言い淀めばと視界が陰り降ってきたのは口付けで
反射的に目を閉じればたやすく唇をこじ開けられ
深く唇を重ねつつも強引にねじ込まれる
普段の彼らしからぬ性急な動きに
苦しくて息を吸おうとするとすぐさま塞がれて
呼吸が満足に出来なくて酸素が十分に吸えなくて
息が上がって次第に頭がぼーっとしてくる
口内をたっぷりと堪能してようやく唇を離してくれた
私をベッドに押し倒した彼をぼんやりと見上げる
彼の顔が間近に迫ってきて床もベッドも軋む音がする
酔った勢いで暴走なんて彼は後悔しそうだなと
頭の片隅で思いながらも拒む気にはなれないから
私は理由の疑問をスルーしてされるがまま
遠慮がなくなったように快楽に浸る彼は無防備で幼い
素直で可愛い尻尾フリフリな大型犬が
ぴっちり被っていた仮面を脱ぎ捨てて
隠していた野性味を剥き出しにして
急に本性を現したような迫力のある笑みに
嬉しさを感じる私は悪い女だろうか
次の日彼は目覚めるとまるっと記憶がないようで
私の家に居る理由も私にしたことも
覚えているのは直の先輩と飲んで
店の前で別れて家に帰ろうとしたところまで
身体目的と思われて嫌われたら立ち直れないから
当面の間は接触禁止を徹底して証明する
君に良いって言われるまで指一本触れないから
せめてものお詫びだという宣言と謝罪をされたけれど
覚えてもいないことで謝られても仕方がないから
でも無理矢理だった
まあ強引だったけれど無理矢理ではないよ
嫌だったら本気で抵抗するから
しょげる彼を慰める私は完全に主導権を握っている
夢の話をすれば言いたくなかった理由を言えば
彼はまた笑ってくれて元の元気な彼に戻るだろうか
その前に当て外れで八つ当たりなんて最悪だと
落ち込んでしまうかもしれないね