掌編小説集

654.レンゲツツジのブービー賞

ペンダントトップが付いたネックレス
着飾らない君に似合うようにと考えながら
凄く悩み抜いて手間暇をかけたプレゼント

君は言葉に詰まりながらも
ありがとうと言って受け取ってくれた

失くしたくないと仕事では着けていないけれど
デートの時には着けてくれているから
喜んでくれていると思っていた

同僚が趣味ではないブローチをプレゼントされて
一応お礼は言ったけれど反応に困ったらしい

趣味では無いと言えばきっと落ち込むし
嬉しいと言えば次からもその趣味になるだろうから

そういう時は今度から一緒に選べばいい
そうすれば自ずと相手が趣味の物を分かってくれる
他の同僚からの策でその問題は解決

しかし頭の中は君の反応でいっぱいだ
普段着けないアクセサリー
選んだ趣味は君ではなく自分で
言葉に詰まったのは嬉しさではなくて困惑だった?

君と恋人になれたことに浮かれていたみたい
外出から戻って来た君に駆け寄る

「困らせてごめん」
「突然どうしたの?」
唐突な謝罪に君は目を瞬かせ首を傾げる

「趣味ではない物をプレゼントして困らせてしまったから」
「う〜ん…困ってはないかな」
悩ましげに答えてはくれたけれど気を使われているのか

「じゃ何であの時言葉に詰まったの?一瞬反応が遅れたでしょ?」
「それは…その…」
戸惑ったように目を反らされる

「理由を教えて?君を困らせたくないんだ」
「好きな人からプレゼントされるのはこういう気分かと思っただけで…困った訳ではないよ」
興味のないものでも好きな人から貰うとこんなに嬉しいものだと初めて知った

はにかむように君が言ってくれて
つまりは嬉しくて照れてたってことだったみたい

ガッツポーズしながら雄叫びを上げれば
今度こそ君を困らせてしまうかな?(笑)
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