掌編小説集

655.特徴点が終生不変でも

ただのお出掛けを装って
デートの約束を取り付けて
その時から舞い上がっている
自覚は終始あったけれど
楽しく終えた筈だった

けれどもう会わない方が良い
そう言って君は連絡を断った
電話は繋がらなくて
メールも返信がなくて
既読スルーにさえならなくて
途絶えた理由が分からない

特大の溜息と共に項垂れていると
君の気に障るようなことを
僕が無頓着に何かしたのだろうと
同僚達からグサグサ刺されてしまった
無自覚に君を傷付けてしまったのだろうか

僕が警察官で君が前科持ちだからなんて
僕の出世の邪魔をしたくないからだなんて

一緒に居たいけれど楽しかったけれど
私を逮捕して更生させてくれたのに
私の存在でまた迷惑をかけたくないから

そんな理由だなんて
やっぱり僕が原因だった

君を傷付けてしまったのが僕ならば
君のその傷を癒すのも僕であっても良いよね?
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