掌編小説集

656.苦労が偲ばれる彼の横合いに私はなりたい

貧乏籤だった弱冠の半生を
偉くなって夢を叶える為に
ストイックに努力を重ねて
値千金と牙城に見せ付けて
他のライバル達を凌駕して
グロスとして占める世襲を
ギャラ飲み名下で蹴散らし
生かすも殺すも彼自身次第
当代随一と席巻していく彼


金に糸目を付けなくて金が物言う
殴り書きの制御不能な獣道の世界
私に出来ることはお金を稼ぐこと
そんなホールインワンを狙う様な
新鮮味を感じられない事ではない
バンクをディセントしてストール
なんて事をさせてしまわない様に
私との繋がりが分かってしまえば
暫定でも弱味になり足元を見られ
波乱の幕開けとなってしまうから


フライトデータ並の情報でエルロン
彼の商売敵でもある派閥の反対派を
チャーミングさでモニタリングして
走り書きした仄聞であったとしても
巡航で手に入れる事が出来たならば
彼との繋がりを気付かれないように
第三者を介して齎された情報として
引っ張りだこのマスターキーで復元


ハイドロプレッシャーのフラップとなって
彼が決めるラダーの役に立てるだろうから
多岐亡羊の大局を見る彼の夢が叶うならば
インロックで面識を無くし自ら消息を絶つ


彼の隣にも傍にも私なんかが居てはいけない
彼の真っ直ぐな人生に私は居なくていいから
彼がカリグラフィーを描く事が私の夢だから
彼が夢を叶える事が出来るならばそれでいい
< 656 / 664 >

この作品をシェア

pagetop