掌編小説集

662.人事異動通知書:過保護の任を解き反抗期の任務を命ずる

何さらしとんじゃと自分の声とは思えないような怒りに満ちた大きな声が響く
直行して間に入り目に激情を孕みユラリと揺らめき厳しい表情で睨み上げれば
僕の迫力に気圧されたのか至極間抜けな顔をして下手な匍匐前進で逃げて行った
シュールな遠吠えさえ喚声にならない見応えも読み応えも無い二次使用の激闘
赤色灯のタイムラインは華麗な剣捌きで死語も私語も厳禁で抜け駆け禁止
リードタイムは門限でブーイングさえ口は災いの元だと猛攻してタッチアウト
後追いを辛抱して常態化を証言台へ誘ってもサービス残業でコピペばかり
ガラの悪いハイエナの副業は物質的主義のちんどん屋でヒット作を連発
競合のあずき相場はオマケしてもマケても異例の百発百中で申し分無く斯有り

私に関わらない方がいい
貴方には関わって欲しくない
もう私に構わないで
もうそっとしておいて
貴方まで面倒事に巻き込まれるから
貴方を巻き込みたくはないから
私一人でなんとかするから
先立つ物がなければならないから
なんとかしなくちゃいけないから

街頭の端っこで金をせびっていた男から庇った矢先に汎用性の報復を受けたのは彼女
僕のやらかした藪蛇によって手数が多く目に余る行為を身を以て受けたつれない彼女
男のせいでプライムに迷惑を受ける彼女と僕のせいで怒られるオウンゴールな彼女
どちらにせよ不平不満の矛先を怪演の二次被害さえ被ったのはツレの彼女
まぐれでも出来る限りかっ飛ばして登板する彼女の希望に添いたいと思っていても
トライアウトに引っ込みがつかなくてもキャスティングのオファーは来ない
前説も前座も触れ込みさえも上演は丸かぶりして顧客のフィーバーは漏電
自分が架線の希望にさえなれないグロテスクな不快感を呑み込みながら問いかける

金を渡そうとしても固辞して男は父親だから大丈夫と鳩時計のように念を押す彼女
元より見上げた根性でマンネリだから傷は浅いと思い込んで自分を鼓舞する彼女
いつでも死ねると思ったら楽になれる気がするから常に持ち歩くこれはお守りで
手が回らなくなってもタッチアンドゴーでレイリー散乱の打線は鬼門をコーティング
タッチアップの走塁ですらどうにもこうにもプライズを復旧出来なくなったとしても
本拠地を殺したら良いんだって気付いたからこれって成長だよねと彼女は笑う
けれどいくら死にたいという最終的な目処にして思っていても殴られれば頭を庇って
いくらエグくてもどれだけムゴくても尻込みしても犬死にも飢え死にもしたくなくて
千里眼を持っていない素人目であっても彼女は彼女自身を一番守りたがっている

ジリ貧のさもしい鉄面皮の父親にとっては稼ぎ頭‐スポンサー‐である彼女
父親からヤングケアラーを兼ねた虐待はゴールデンエイジより前からの恒例行事
牢獄の中で行われる呪詛の儀式‐トレーニング‐だから狼煙さえ我慢を強いて
ほんの少しの情報を零すだけで視線を動かすだけで多くの目ぼしい事を推測し
言葉を選んで誘導して仲間を売るような罪悪感を煽ってどこにも行けなくして
断ち切れない鎖で繋がれているからなんてことなかったと痛いけれど我慢出来るからと
各局のパンタグラフだと思い込もうとして自分を大切に出来なくなっていく
住み込みで没入させブレーカーを握り通電火災の出火を引き起こす支配人
時計の針が鋭利な凶器に変わって時間が経つ度に癇癪を起こすように刺さる

子供だから親の信頼を得ようとするし信じようとしてしまう食わせ物のヤマ
犬は三日飼えば三年恩を忘れぬと武者修行と称して躾けるのも親の仕事
成長曲線を捻じ曲げてぽしゃらせた子供を引き寄せる術を持つのは毒親でしかない
育ててもらった恩という風に感じてしまい毒が回って身動き出来なくなっている共依存
忠義的にべったりと依存するのは愛に飢えて必要とされたかったからで
信じるから騙され裏切られるけれど彼女は本気で父親からの愛を信じている
清純派を装った条件付き愛情でイヤイヤ期も無く親の期待に応えることが出来れば
上手くいけば愛情という多大な報酬が与えられた経験があるからこその厄介
そうじゃなかった時の別件の思い出にすがってまた気まぐれに優しくされて期待して
そうこうしている内にモラハラに慣れしまって素朴な疑問すら抱かなくなってしまう
質問してきたくせに自分の満足する回答をされないと同じ様な質問を繰り返して
自分の言いたいことだけを相手に言って強く反論されなかったら当人の同意を得たと
勝手に周囲に押し通せる人の欲望を知り尽くした正に悪魔ならではの作戦
何故あいつを信じる?俺の方が正しいことを言っているのは考えれば分かるだろう?
だって俺はお前の親だぞ?いの一番に疑うべき人間が違うだろうと言い包めて
そしてこいつは何でも俺の言うことを聞く奴って依存症で完全になめられる
親という権力があればいとも容易く躾という名の虐待が子供に対して実現出来てしまう
自分の人生を粗末に扱って隷属している親を何故自分の全てを犠牲にしてまで
面倒をみなければいけないのかとそんな必要は全く無いのだとそんなことすら気付けない
スキージーに均されて躾という名にラッピングされた男性不信もとい人間不信
都合良く扱われて根こそぎ使われてナメた真似で忍び込み喰い物にされても
身綺麗なおべべで泣きの一手をすってんころりと信じる彼女が馬鹿なだけと笑う

暴力という弱味を握って脅したらリベンジポルノを示唆されて脅し返された
後日極秘に金を渡してその瞬間は済んだけれど強奪の上乗せが一生続くだろう
手渡した封筒から金が落ちるのは隙間があるからで埋める為に金をもっと寄越せと
無茶なんかではなく親切で言っているとこれはお前が守りたい彼女の為だと
集団訴訟に芽が出れば怪情報の投げ文を寄越して剽軽なタレコミで情報提供
割本の入稿を待たずに書評するコンクールで手持ち無沙汰なモブキャラの愛好家
スターダムの決起集会でクルーザーにてうじゃうじゃと結託しぼったくりの共謀
乾杯の音頭はすんなりとはいかず無銭飲食でT字路をべっ甲でコーティング
これまでは良い事が片手で数えられる程しかいやそれさえも無かったけれども
ここまでに悪い事が両手で数えられる程度には移り変わっている彼女の人生
大躍進など当たり前に無くてコツコツ地道にやっとここまで来ているのに
これっきりなんてことはあり得ず呑気にこのまま言う事を聞き続けたとしても
大動脈の金が途切れれば不服として戦力外通告されて命の保証なんて無いだろう
頸動脈に深手を負って格調高い検視に揚げ足を取られて合同捜査はお蔵入り

僕を牽制する為に彼女が犠牲になって旅情のダイヤが妄りで淫らに乱れる
収蔵されたモノが弾け出てパニックも止められず回転灯の経過観察は重症化
面会謝絶のべしゃりで功労虚しく泣き疲れて暴れ疲れて水入りに寝落ちする
止めることも出来ずどうすればいいか何をどうしてやればいいのかもう分からない
落ち込みはスライディングして力を失ったようにその場にしゃがみ込む
呼吸は適正にはならずもうこれ以上息が吐けないのではないかと思うくらいに
法外なアドレナリンの代わりに身体中から空気がなくなるかと思う程に
深い深い溜息を吐いて言葉足らずな器物破損の現行犯に頭を抱え微動だに出来ない
ピッキングで不法侵入したって回転扉の向こうのラウンジまで辿り着けずに
ノーカットで肩にかかる重荷を一緒に背負ってあげる事さえ出来ない

出待ちして突然介入することは正当な動きではないことは分かっているけれど
どんな些細なことでも役に立ちたくて庇になりたくて遠慮なんかしなくていい
何か力になれることがあれば頼って欲しいし肩入れして直撃に気張りたい
未練を残しているからがっしりと心に食い込んで住居侵入の機会を狙われて
フォローばかりしてきたせいで自分自身を蔑ろにして付け込まれる可能性が拭えない
身を引いて彼女の幸せを願うとか困らせたくないとか思いやりではあるけれども
自分がなんとしても絶賛に幸せにするというのも思いやりではあるけれど
泣きの一回を乱用する父親がどう扱うかどう扱われるか分からないから
レアな安心感を求めるのは実体験している不安感と劣等感の二股があるから
辛そうにしているのを見ていたら捌け口になれるのは僕しか居ないって
既にお聞き及びかと存じますが傷付き慣れているけれど痛く無い訳じゃない
刺股では距離を取れずに武士(もののふ)であっても取り押さえられない
過去に誘われて現在に戻れず未来に行けないその原因を突き止めて取り除く
施すなんて烏滸がましいけれど得点圏に犠牲フライで退き際の良さと往生際の悪さ
縺れた糸を解くことは出来ずに画面越しでも触れてしまえば絡ませてしまう
関係無いポストシーズンには全く関係無いことは分かっているけれども
どうにかしたいしプレーオフでもどうにかしなければならないとも思っている

彼女が父親に宣伝の恩を感じているのならば僕が父親に喧伝の恩を売ればいい
彼女の自然由来の考えに背いてでも父親に一点物の恩を売るフリをすればいい
誰かの為の彼女は生息して居るのに誰かの為に演じる熟練の彼女も居るのに
しかしそこに内助の功の実務家である彼女の為の彼女は居ないし存在しない
上手く気持ちを表現出来ない上に隠して圧縮データの解凍を如何にも阻止して
僕を助けようと自分が犠牲になるペイズリーな行動を取ろうとする彼女
ギンガムチェックな彼女を絶対に死なせはしないと余計に気合いが入る
やるべき事は死ぬ事ではなくて生きて償う事だということも分かっている
しかしながら積み重ねがもうこれ以上積み重ねられなくなり崩れる前に
錬金術の横取りを先送りせず大一番の大事な時期に先回りして時効を撤廃
ギアを入れて電光石火で大胆な行動に移して悪手と握手して悪主に悪酒を
危険だと思ったけれども父親に立ち向かった彼女の覚悟は無駄にしたくない
彼女をオービスから隠し通したかったら人任せにせず父親から守り抜くしかない
火の中水の底の彼女の為ならたとえ火の中水の中に潜ってどいてと直帰

禁止されている事には意味があり理由があれど憂いを払う為ならだんまりで
フレキシブルにカードを切って憂いがある要素を一気に潰す一騎当千の快進撃
これ以上足を突っ込むならばボヤキは勿論クシャミ一つでも失敗は許されない
信念を貫く為に危険を冒してルールを破り守る為なら罪ぐらい誇りを持って背負う
殺るのなら序盤から一気に勝負に持ち込んで瞬殺しなければならないから
彼女が逃れる為には救われる為には殺すしかないのかその御業には半信半疑
どういう風の吹き回しなどと最初から疑ってかかるようなことはしない
信じてもらえないなら話しても意味が無いし話す気力もなくなるから一休み
部も同好会もサークルも研究会もビックデータで許嫁をマネタイズ化
リレー捜査の代名詞‐ドミナートル‐はパーテーションでザックリと区切られて
彼女の為と言うのならば彼女の意見を重点的に優先させればいいだけなのに
自分のしたい様にしたいだけで言いなりにしたいだけで父親の意見をカモフラージュ

捕まって裁かれて罪を償わせて登ったら登っただけ急降下すれば地獄でも
誰であろうとも修理固成しなければならないなんて一区切りの道徳倫理
僕の身勝手な我が儘で彼女の必要な人‐ヒットメーカー‐になりたくて
クローゼットのトータルコーディネートはこれでいいこうするしかない
守る手段がそうするより他無いから全ての責任は僕が持ちますと計画を練る
フォームが真面目な人間は犯罪にだって身を低くして真面目になれるから
アリバイの演出過多になっても偽装工作をミスってもたとえボロが出ても
アメコミに噴き出して咳き込んでも集めたページを再び捲くることは無く
振り返ることも無くコースターを置いて席を外した彼女にだけは鉄壁のアリバイを

僕が蛇行して破れる身も蓋もないルールはこれが限界‐デッドライン‐
腑に落ちない父親を手の届かない遠くに逃がして輸送した彼女の近くで守る
彼女専従の僕だけの自警団を結成して出陣式へ彼女に円満退職で安寧の目星を
群集心理の波長がキャリーオーバーした最高峰の英雄視なんて公示日さえ期待しない
妄言多謝の素質はあれどフェミニズムのディスレクシアで痛い所を衝く
僕の罪はホールドされ消えなくても点字をおさらいすれば彼女の心は取り戻せる
惚れ込んだコアなファンの馬鹿な所業で酷評されても苦労人だと善人面する気は無い
ガールズトークの私怨‐タブー‐なんてお構いなしで慎み深い自責の念など無い
箸にも棒にも掛からないけれどもシリアルナンバーを細かく刻んで合間を縫う
ゴールデンスモークの枝別れした逆戻りに退廷を命じて被疑者死亡で送検
彼女を殺した人殺しを見つけ出して僕という人殺しを生み出すインターバル
ロックオンした勝算なんて何処にも無いけれどももう考えるのを避けたかった
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