掌編小説集
663.シンクロニシティのキラーパス
彼がそういうお店の前で煌びやかに着飾った女性とキスして謳歌しているのを見てしまった
パシャリと鮮明に敷き詰められた記憶は記録映像となって呼び覚ます薄情なタブロイド
私の中の劣等感が彼の言葉によって噛み砕かれていき死相がどんどんと小さくなっていく
後付けであっても付加価値がなくても私は私で変わらないと結紮の口添えをしてくれた彼
彼が私を私自身を求めてくれるのだと実感して生まれた安心感が胸の内に広がっていく
彼がくれた守る為のお守りが何かが起こると警戒を抽出している証拠のようで怖いけれど
打ち抜き井戸からマグマのように噴き出す犯罪をひいては無差別に治安を脅かす宿敵へ
一緒に立ち向かい迫り来る工作員を脱兎の警らにて次々とオーバーステイさせて勝ち越し
基音の意志を同じくしてハイドアンドシークのインチキに善き落第をと思っていたけれど
彼が私を彼の部署へ勧誘し登用した時の誘い文句は私の父親がその宿敵の末端に居たから
無粋な酒乱でホラ吹きを切り盛りしてほっつき歩いていたからか号証の密告なども無警戒
コンニャクもレンガも座布団も餅代も氷代もごっそり酒代に消えて常に困窮し店賃を逼迫
史上の専権事項の政権を握っている筈の宿敵からの支持率は皆無で賞味も消費も期限切れ
父親の体系の直系である私を含めた家族は申し送りの進級さえないだろうと存亡を放置状態
それでも部署の中では一番宿敵に近しい私の身辺から朧げでも情報を取れるかもしれないと
規制線ギリギリの勝手口として側に置いているだけだと自分に執拗に判然さを言い聞かせる
断片的な情報であってもある程度の観念的な推測の出足は順当に擁立が可能だけれども
それら本題の論調から疎遠にして隠す為に行動していることを同時に察してしまうから
足を踏み入れて口論のような出過ぎたことを言わないように余計なことは口にせずに籠城
小耳に挟んだ程度では情報共有などもせず良識を持ち合わせたガラクタは予め身を引いて
似而非の献体に徹して宝の持ち腐れとならないように仕事に心血を注いで精を出せばいい
切り込んで掛け合う商談のキーパーソンが知ったかぶりでフライングをしてはいけない
移送に期待して一人で盛り上がって馬鹿みたいと踏んだり蹴ったりなどと思ってはいけない
琴線などには触れることなど無い私に興奮なんてしないのだから勘違いしてはいけない
島流しで食い繋いだ厳つい呻き声の咆哮で不合理な高座をつとめ勝ち目の控訴をいざ鎌倉へ
仕事の為に近付いた女とすれ違いざまに再会したけれど急発進で公演が再開する訳ではない
身なりも素養もそれなりの女と息つく暇もなく直走り交換条件での駆け引きが思い出される
前にどこかでお会いしましたか?と景観‐アドミッション‐の地固めは絶妙な匙加減で
いえ会っていないと思いますと果たし状の風穴を開けられても巣立ちなんてさせずに感作
そうですかと憔悴したギブアップでデフレを醸し出し看取らせたらインフレを起こさせる
使い古されたプロットと焼き直しされたストーリーでも出たとこ勝負はお手の物でいちころ
他の女には言っていないよね?と打ちどころの悪い犬骨折って鷹の餌食の名産を警戒して
勿論可愛い子にしか言わないからそんな野暮で余計なことは考えないし言わないでいい
いつだって必要なことしか言わないからと泣き付かれても心の拠り所として素数をちら見せ
非整数次倍音の甘いようで整数次倍音のように甘くないありがちな手眼のような台詞を吐いて
小恥ずかしくて脱走したくなるようなことも恋愛マスターのキミが言うなら間違いないとか
なんだその似合わないサングラスをかけた当て馬のような烙印を押されたふざけた称号は
彼式のそういう事には手慣れているとか決まった相手はいないし頼めば抱いてくれるとか
人は見かけによらないけれどもストレッチの効いた根も葉もない無間地獄が立ち塞がっても
出すぎた杭は打たれないからヒヤヒヤした度胸試しでヘトヘトでも身の引き締まる思いで
ご指名ありがとうございますと坑道を松明で照らし出すような取っ付き易い笑みを浮かべて
相討ち覚悟でも近付くなと忠告されたのにも関わらずこうして会いに来てくれて凄く嬉しい
そっちが俺になら話すとアナウンスして呼び出したから来ただけの話で一体何の用件だ
巨編の途中の状況はどうでもよくて正史として欲しいのは黒い噂の渦中に居る人物の名前
警察が具体的に動き出して逮捕する前に法にも委ねず足軽にさえ任せず建立を没収して
錯乱状態の理想だけでは名刹を実現出来ないから現実的な羅針盤にしなくてはならない
支持を指示して自由に動けないならばラストスパートの世界をこちらに持ってくればいい
それが賄賂でも癒着でも羽振り良く変わらなくて無念を晴らす為に自分で裁き俺の手で葬る
教えてくれたら事件に有益な瑞瑞しい情報をお伝えして提供しますよと対質のデットヒート
俺に情報を売れと言うのかとショートコント並の実況見分を筒抜けにしてはならないから
必要ありません直にもう間もなく解決しますからと銘打つ弁護団が釿削りのカーチェイス
エクストリームなヘアピンカーブをフルスイングしてバカンスなポストをクーリングオフ
自分ファーストな肖像画に名を連ね老体が全盛期を勘違いで歴代の被告人ハを被告人ヲに
司祭のアドベントはしょっちゅうで国体でブレイクした小手先の気付けを嗅ぎ付けた機関誌
タイムホールのディレイは戯曲でブレークして大目に見られていたハンデは免疫となる
猟銃と災禍のパレードを編纂するように解決の決め手になったのは協力を仰いだ彼女だった
格納庫へランクインしたのは末端ではあったけれども叱咤激励のモチベーションは上がり
生計を公設民営にした防犯利権の大恩を骨の髄まで供養‐リフレッシュ‐することが出来た
血統書付きの領家の取り巻きが敷居も鴨居も超えて鴟尾の蹲に案山子を置きたがったとしても
優秀で手放したくなかったから彼女にイチャモンを付けて出禁にした元部署の手が及ぶ前に
命令として部署へ引き止めたけれど分院の仕事仲間としてよりも俺自身が手放したくなくて
頭から離れないお墨付きの存在だと気付いたから気晴らしの通算としての節目に公私混同
独特な振り幅の特殊な彼女の値打ちなんて代表作が壺に嵌まった俺にしか分からなくて良い
フォローするのは合理的に仕事をしているだけで課外授業をするほど面倒見は良くないし
自分の失点にならないように一服盛って立ち回っただけでたとえ良い結果になったとしても
絶え間無いカーテンコールの何たるかで改めて壇上に上がって褒めるようなことではない
何を企んでいるなどといった警戒のパレットは物理的なリップサービスで塗り潰される
人聞きの悪い事を言わないでと盟友気取りで晩年のグラビアはころんと土間のドミトリー
心構えも散策もただの経験則であり毒をもって毒を制したあの時のことは特に感謝している
その態度はとても感謝している人の行動には見えないと馴れ馴れしく首に絡みつく腕を掴む
含み益が盛況でもリスカやアムカを半笑いでキメてトラブルメーカーの過呼吸を掘り起こす
ストライキもボイコットも特効薬とはならずに営業停止処分で離散集合を繰り返して過疎化
気風に魔が差した二の舞を追跡してしこりを残した轍をパッチワークして融和にエントリー
お茶の間のリーズナブルな寝袋でのミッションは相部屋で密かな交換日記‐パッチテスト‐
小技は利かないし大技でねじ伏せることも出来ずアドバルーンのスクラッチはNever Enough
オーパスのプレイリストをフルコースでディスプレイされる前に起立性調節障害にアラームを
オポチュニティを手伝うのなら良いけれども邪魔だけはするなと釘を刺して引き剥がして
強情な人と言われてもいやキミが強引なだけと風の便りをイーブンに言い残して足早に去る
出会い頭にキスをされて唇も心も気持ち悪くて今すぐにでも彼女とキスして上書きしたい
しかし割に合わない牛歩戦術で定着した天体観測はデリケートな灯台下暗しのアソート
恋愛なんて無駄で愚か者だと思っていた時間に彼女という意味が出来て心地良く凄く楽しい
スタンドアローンな彼女がやっと家で食事を作って待っていてくれる関係になったのだから
始まりは宿敵の為の強制的な辞令だったけれども遂に掴んだ念願の彼氏の座は何が何でも死守
ただいまと家に帰ればおかえりと彼女が居て彼女お手製の食事が並んでいて食欲をそそる
先程までの一連の出来事を丸ごと丸めてゴミ箱にポイっと捨てて一緒に食べようとすれば
彼女は何故か直ぐに帰ろうとするから疑問に思って食べないのかと聞けば分かりましたとだけ
字足らずのリクルーターとして字余りのマニュフェストを掲げて羅列していたような頃の
まるで出会った頃のような他人行儀で緊張の見える態度にいきなり変わって疑問符が次々と
軽い妄想から最悪の事態までなまじ優秀だと自覚している分色々と可能性が目まぐるしく
頭に浮かんでは消えて原因‐タネ‐が分かれば対処のしようがあるけれども難航に一騎討ち
満遍なく隅々まで記憶を探したところで思い当たる節も無く上の空どころかいつもより多弁に
それでもこんな彼女と居るのも嫌では無いけれども気まずいこの空気は何とかしなければ
無自覚に焦っていたのか少し圧が強めに事の次第を聞き出せばあのシーンを見られていた
私と居ることに特に深い意味は無いでしょうしとペガサスやユニコーンのアクアリウムを形成
気付かなかったことにと言いますと彼女にとっては言葉通りの無かったことにと同じ意味
恋人役なんて便利な役名だけど言い出したのはこっちだけど本当はそれっぽいのでは駄目で
取り繕ったり冷静を保てないくらいに必死で随分と疑われてしまっているから謝罪するよりも
早急に対処をしなくてはいけないのに俺の供述だけでは彼女が見た物的証拠には敵わない
どこからお話しすれば信じてもらえるかととりあえずあれは誤解だし彼女でもなんでもない
随分と仲が良さそうに見えましたと言われたけれどもどう解釈すればそうなるか分からない
誤解だ話を聞いてと落ち着いて話を聞いてと彼女に言い募っている俺が一番落ち着いていない
ねぇ話を聞いて頼むからと言っても今までの立ち回りのやり方に不信感が生まれてしまって
情報は人質で面倒くさがって否定しなかったから彼女が真に受けて誤解することになって
どれだけ甘い言葉を捧げてもどれだけの誠意を見せても彼女の心に響いてはくれないオニバス
自分にとって特別で愛しい時間が相手にとってはそうではないなんてことは切な過ぎるから
全てを見なかったことにして自分には無関係なこととしてバッサリと片付けられてたまるか
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ただいまと家に帰ればおかえりと彼女が居て彼女お手製の食事が並んでいて食欲をそそる
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彼女は何故か直ぐに帰ろうとするから疑問に思って食べないのかと聞けば分かりましたとだけ
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軽い妄想から最悪の事態までなまじ優秀だと自覚している分色々と可能性が目まぐるしく
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無自覚に焦っていたのか少し圧が強めに事の次第を聞き出せばあのシーンを見られていた
私と居ることに特に深い意味は無いでしょうしとペガサスやユニコーンのアクアリウムを形成
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全てを見なかったことにして自分には無関係なこととしてバッサリと片付けられてたまるか