掌編小説集

86.遠回りした赤い糸

「貴方も優勝目指してるの?」

卒業間近、足を伸ばした公園で出会った同い年の子

二言、三言、話してサヨナラする

「勝ち上がっていったらいつか会えるかもね。名前はその時にでも。またね。」


なんて自分から言ったのに
私は怪我をして諦めた。


リハビリで1年遅れの入学

桜を見上げていたら声をかけられた。


「俺は、〇〇」
貴方は名前を告げた

「私は、○○」
振り返り私も告げる



約束にも満たないただの会話、戯れ言だった

思い描いたシチュエーションとは全く違うけれど

私達には大切なものだった







紆余曲折あったけれど
優勝の祝杯をあげる仲間を
彼と手を繋ぎ見守るのは
また別のお話。
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