だるまさんがころんだ
こうくん
「宏太!まだ取れないのか?」
「ちょっと待てよ!あと少しだから!」
宏太は広場の大きな木によじ登り、枝に引っかかったボールを取ろうとしていた。
「まだかー?」
「うるさいなぁ!だったらおまえが登れよ!」
言いながら、手を伸ばしてようやくボールに指先が触れる。
「もうちょっと……」
ぐっと手を伸ばし、何度か指先でボールをつついた。
ーーだーるまさんがー……
「ん……?おい!なにか言ったか?」
「え?なにも言ってないぞー」
「あれ?おかしいなぁ……」
もう一度ボールに手を伸ばす。
ーーこー『動いちゃだめ!』ろんだ!
「え……?」
男の子の声に混じって、女の子の声がした。『動くな』と言っている。
宏太はピタリと動きを止めた。
「宏太?おーい!なにやってるんだよ!」
ーーだーるまさんがー……『今よ!』
宏太は一目散に木を降りていく。
「お、おい!宏太、ボールは?! 」
「う、うるさい!」
ーーこーろんだ!
ピタリと動きを止める。
ーーだーるまさんがー……
また一目散に木を降りていくーー
「あ!宏太!!」
見上げていた少年の視線が、地面に移った。
「宏太!!おい!宏太っ!!」