【短編】もう少しだけ
もう少しだけ
-KAYANO-
放課後。
薄暗くなった教室の1番後の隅っこ。
掃除用具を入れたロッカーにトンッと背中があたった。
ひんやりとした感触が、薄い白のブラウスから背中へと感じる。
目の前には、付き合って半年の彼氏が、少し恐い顔をして立っていた。
その顔を見ると、やっぱり後ずさりしてしまう。
けれど、もう下がる余裕なんてない。
「まっ、待って?」
両手を開き、彼氏の胸の辺りを押さえた私に
目を合わさず、
「ほら、やっぱり」
そう言い残し、教室のドアを少し乱暴に開けて行ってしまった。
真祐(マヒロ)とは、告白されたから何となく付き合っただけだった。
必死に告白する姿が愛しいって思ってしまった。
私の言うことなら何でも聞いてくれる真祐に甘えてたのかな?
彼氏と彼女と言うよりも、飼い主と飼い犬って感じになっていたんだ。
それでも楽しかったし、上手く行ってたんだと思う。
ううん、そう思っていたのは、私だけだったんだよね?