【短編】もう少しだけ
ほったらかしにしたプリントまでトボトボと肩を落として戻った。
階段を上がると、廊下の真ん中辺りで捨てられてバラバラのプリント。
ふ……何だか私みたい。
誰にも気づかれなくて。
ほったらかしにされてて。
あ、私の場合は自業自得。
プリントは、私がほったらかしにしただけか。
同じにされたら迷惑だよね。
グッと目頭が熱くなって、私って実は涙脆いのかなぁ?
なんて思ったり。
よしっ! 拾おう。
たかがプリントを拾うだけで気合を入れなきゃ出来ないなんて
相当弱ってるな、私。
え!?
歩き出そうとした時だった。
後からギュッと抱きしめられて思考回路が止まる。
「何でそんな普通なわけ?」
え?
「何で何も言わないんだよ」
え?
「何で…何で……俺を好きになってくれねぇんだよ」
首を横に向けると、私の肩に頭を乗せた真祐が居た。
何が起きてるのかが理解出来なくて。
何て言えばいいのかがわからなくて。
ただ、真祐の香りがして、それだけで胸が苦しくなった。