【短編】もう少しだけ


「んだよ……何か言えよ」

「え……。真祐って……そんな喋り方だったんだ?」

「ぐぁ! いや、これはその…えっと」



私から離れて、慌てる真祐。


ゆっくりと体を回転させ、少し開いた真祐との間を一歩進んで近づいた。

頭を掻きながら、照れくさそうに下を向く。
そんな真祐を見上げるだけの私。



「はぁ~」



大きな溜息をついて、私の目を見つめた。



「やっぱ茅乃が好きだわ」



え!?


目を見開いた。



「茅乃が俺の事、好きになってくれてたのかなーって思ってたからさ。
正直ショックでさ。
でも距離置いたら、何か言ってくれるかなって思ったのに、茅乃は今まで通りで。
それに勝手にむかついて、冷たくしてごめんな?」



好きになってくれてた?

距離置いた?

むかついた?



「だから、もう1回。
もう1回チャンスちょうだい?
俺、好きになってもらえるように頑張るからって、えぇ!?」



馬鹿。

馬鹿。

馬鹿。


真祐の馬鹿。


一気に流れ出した涙。



少しの距離がいつも遠かった。

自分から、その距離を埋める事なんて出来なくて。


だけど今は、その溢れ出した涙のせいにして、真祐の胸に抱きついたんだ。


でも、私を抱きしめ返してはくれなくて、オロオロしてる真祐。

わんわんと泣き続ける私は、何を言ってるかもわからなくて子供みたいだった。






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