【短編】もう少しだけ
「まっひろがぁー。終わったっヒクッんだと…クッ。好きってーっうぅぅ~」
「え? え? えぇぇ???」
「まっひろの…ばかぁぁぁ~~~」
「えぇ? ちょっ、ちょっと茅乃、落ち着いてね?」
泣きながらも落ち着くのは真祐だよ。
って思ってしまった。
すっごくオロオロで、馬鹿みたいに必死で。
今度は笑えてきた。
「えぇ!? 何で笑ってるの? 泣いてたんじゃないの!?」
あはっ。
真祐の顔が焦ってて面白い。
「真祐がね、怒ったんだと思ってた」
「怒ってなんかないよ。拗ねてただけ」
「愛想尽かされたんだと思った」
「尽かすわけないじゃん」
「私、真祐が好きだよ?」
「え? 本当に!?」
ドキドキと速くなる心臓の音。
そのリズムが心地良い。
そして、私をギュッと抱きしめてくれたんだ。
「俺だけじゃないの? 茅乃の事を好きなのは、俺だけじゃないの?」
うんって頷くと、抱きしめる力が強くなった。
「あ、それと…ね?」
抱きしめられた隙間から顔を上げて真祐を見上げた。
「ん?」
「私……キス…した事ないんだよね。
だから恥ずかしくて。ごめんね?」
言った。
言えたよ!
素直に言えたーーー!
「はぁ!? まじで!?」
喜びの私の耳に素っ頓狂な声が響いた。