【短編】もう少しだけ
「へ?」
「くっそー。あいつらめっ」
「へ?」
「え? あぁ、いや……何でもない」
頬を赤くした真祐は、照れたようにそっぽを向いてしまった。
何がなんだかわからない私は、不思議な顔で真祐を見つめていた。
暫くして、やっぱり頬が赤い真祐が私をチラッて見ると
「キス……してもいい?」
「え、あ……うん」
そのまま下を向いてしまった私。
馬鹿!
うん。とか言いながら下向いちゃキス出来ないじゃん!
「あはっ、いいよ。茅乃の準備が出来るまで待つし」
えっ!
あ、違うの、恥ずかしいだけ……。
そう言おうと思って顔をあげた瞬間、
真祐の顔がすぐそばにあって。
――優しいキスをくれたんだ。
「なんて嘘だったり?」
少し離れた唇から、真祐の低い声。
キメたつもりかもしれないけど、顔は真っ赤だよ?
「嘘つくんだ?」
「えっ、いや…その。ごめんなさい」
さっきまでかっこよかった真祐は、
焦っていつもの可愛い犬に戻ってしまった。
かっこいい真祐も好きだけど、
もう少し可愛い犬で居て欲しい。
もう少し……だけね?
-END-
-07.5.30-
⇒後書