【短編】もう少しだけ
「俺達には、俺達のやり方があるんだよ」
そう付け足した時には、いつものニッコリとした笑顔を見せていた。
ビックリした……。
一瞬、真祐が知らない人みたいに見えたんだもん。
その笑顔につられて笑って
『そっかー』
とその場を離れた子も居たけれど、
残った数人が、また嫌な事を言い出した。
「でもさー、茅乃って先輩と付き合ってたじゃん?
あの先輩モテてたし、手早かったでしょ?
物足りなくない?」
何言い出すのよ!?
確かに先輩とは付き合ったけど。
あの先輩、自分がモテてるモテてるってウザくて速攻別れたっつーのっ!
「先輩とは、すぐ…」
「今付き合ってるのは、俺だけど?」
私が言いかけた時、真祐の声が重なった。
「そっ、そうだよね」
「あはは、ごめん…ね?」
真祐の顔を見ながら、少し焦った顔で笑う女子。
私には、その顔は見えなかった。
真祐?
女子が去った後、私の方を振り返った真祐はいつもの真祐だった。