煙草とキス
微かに聴こえてくる、快斗と梓のギターセッション。
龍也と徹平の、大きな笑い声。
あたしは、その場にしゃがみながら、ケータイを持つ手を変えた。
もう、右手は汗ばんでいる。
「あっ…そういえば、傘ありがとう。
世那くんに、渡してもらえたかな」
「うん、受け取ったよ。
こちらこそ…素敵なライブありがとう」
「………嘘!ライブ、来てくれたの?
すごくすごく嬉しいっ」
あたしがライブのことをきり出すと
メイは声をワントーンくらい上げて、甲高い声で喜んでくれた。
あたしは、メイにライブの興奮を
ひかりさんの分まで伝えながら、またステージの上のメイを思い出す。
初めて出会ったときとは
まるで別人。
たくさんのライトと歓声を浴びながら歌うメイの姿は、本当に衝撃的で。
あたしの脳裏には
深く、鮮明に刻まれていたのだった。