煙草とキス
と、そのときだった。
快斗が手を離したと思ったら
あたしの左手に、
快斗が何かをそっと握らせた。
そしてあたしの唇に軽くキスをして、ゆっくりと体を起こした。
「それ……見てみな」
快斗は、柔らかくて、クシャクシャと寝癖のついた髪を手で直しながら
優しい目をして、微笑んだ。
普段あまり見せない表情に
あたしはドキッとしながら、2つに折られた紙を開いた。
すると、それは──────
「bitterlips……ワンマンライブ…?
えっ、ちょっと待って…」
「何、その反応」
「これって……ライブってこと…?」
「そういうこと」
それは、bitterlips 結成初
ワンマンライブ2日公演の、合同チケット。
“オールスタンディング”
そう書かれた文字の横に、快斗の手書きでだろうか。
“優先客”と書かれていた。