煙草とキス
快斗の香水の匂い。
ほんのり甘い、煙草の匂い。
あたしを抱きしめながら、
ふざけて倒れる快斗。
泣き止まないあたしを、無邪気に笑って指さす快斗。
「泣かせちゃった」なんて言って
梓に笑いながら電話する快斗。
泣きながら、そんな快斗の何もかもが愛しく感じて
言葉では言えないほど
胸がギュッと苦しくなって、脈拍が速くなるほど熱くなって…
「…快斗っ……」
とにかく、抱きしめたかった。
苦しくなるほど、
息もできなくなるほど、抱きしめたくて。
「澪っ、苦しいって…」
「うん…分かってる」
「ははっ、何それ」
いつもより優しく笑った快斗は
あたしにもう一度キスをすると、また梓との電話に戻った。