煙草とキス
───それからあたしたちは
カフェで、ガールズトークを機関銃の如く話して時間を潰した。
「じゃあそろそろ……
渋谷駅の方に戻ろっか。あっちで時間潰した方が、ライブハウスも近いしね」
「そうですね。もう…3時過ぎたし」
代官山のお洒落な雰囲気に包まれ
ちょっとその余韻に浸りながら、渋谷駅の方へと向かった。
電車の中でも、とりとめのない話ばかりをしていたけれど
“結婚”という話は一切出ず
あたし自身も、そのような言葉を口からは出さなかった。
ただ、異様にその薬指の指輪が
輝しく目に映っていたのだ。
「いや~、渋谷来るの久しぶり!」
渋谷駅を降りるなり、ひかりさんは目をキラキラさせて言った。
「あたしも…久しぶりかも」
よくテレビに映る、東京の映像。
それが目の前に広がっている感じで、東京在住のあたしでさえも
それはそれは、圧倒されそうな程、うじゃうじゃと人が多い。
「平日のおやつ時でも、これだよ!」
「あたし、この時間帯は来たことないけど、本当にすごい人の数ですよね……」
うだるような暑さも、
これじゃあ3度くらい上昇しそうだ。