煙草とキス
────まだ星が見えない、渋谷。
ケータイのディスプレイでは、午後6時前を表示している。
「整理番号順に並んでくださ~い!
ご不明の場合は近くのスタッフまで──」
拡声器で整列を促す、スタッフの声。
ざわつく人々の声。
バイパスを走る車の、クラクション。
まだ完全に付いていない、ライブハウスの外壁を照らすライト。
今、目に見えて
今、耳に入ってくるいろんな音。
あたしはドキドキしながら、辺りを見渡してみた。
列の先頭には、派手に着飾った女の人が2人立っている。
きちんと並ぶ人々を
見える範囲ぐるりと目を動かすと、男性やカップルが、随分いるようだ。
今回の客は、ざっと見て───
500人は軽く居るかもしれない。