煙草とキス
静かになった4人の間に流れる雰囲気は、どことなく異様。
あたしの心臓は
大音量で拍を刻んでいた。
だけど、そんなあたしの心臓をよそに、徹平は口を開いた。
「先月末、突然グリレコから龍也に連絡が来たんだ」
「……えっ?
グリレコって、あのグリレコ!?」
「うん、そのグリレコ」
オーバーにも思えるくらいの反応を示したあたしに、梓が繰り返し頷いた。
【Gritter Records】
よく、略してグリレコとも呼ばれているこの会社は
日本の音楽ファン……
特にロックが好きな人なら誰でも知っている、メジャーレーベル。
そう。つまりは、メジャーの音楽事務所というところだろうか。
最近は、『グリレコからデビューしたアーティストが音楽業界を支えている』とも言われている。
そんな大手会社からの連絡。
あたしが驚いたんだから
彼らがそれ以上に、驚かないわけない。