煙草とキス
誕生日が過ぎると、8月はあっという間に来て
あっという間に中旬になった。
未だに、20歳になったという実感はこれっぽっちもない。
“大人になる”って
こういうもんなのだろうか?
「いらっしゃいませ」
19歳になって、すぐに始めたこの古着屋のバイトもそろそろ1年を過ぎる。
特に出世するわけでもなく
時給が大幅にアップするわけでもなく
何かの技能が身につくわけでもない。
強いて言えば……
洋服をたたむことが上手くなる。
それくらいだ。
どうしてこのバイトを、あたしは選んだのかは分からない。
少しでも稼げるのなら
仕事はなんでもよかったからかな…。
でも、不思議と嫌いじゃない。
接客は苦手だし、どんなバイトも短期間で辞めるばかりだったのに。
それでもあたしが続けられているのは、奇跡かもしれない。