煙草とキス
なんでもかんでも
飽きっぽい性格のあたし。
唯一続けられていると言ったら、バイトと恋愛だけかもしれない。
それに比べて、快斗は────
見えてきた夢を掴もうと、最近、よりいっそう音楽に励んでいる。
あの単独ライブ以降、驚くほどにbitterlipsの人気は上がって
限定3千枚で発売された新曲は
渋谷の大手CDショップに置かれ、瞬く間に完売した。
タイバンの数だって、以前よりもいちだんと増えた。
インディーズバンドを多く取り上げる音楽雑誌から、何度も何度も連絡が来るようになってからは
所属しているインディーズ事務所も
bitterのCD制作に積極的になってきたらしい。
でも、快斗はそんな事務所を
皮肉るように鼻で笑った。
『今さら遅せぇよ』
あたしの前で、快斗は愚痴を溢した。
事務所の代表は気分屋らしく、何かと自分の気分に任せる。
そんな代表に
快斗の愚痴は、耳障りかもしれない。