煙草とキス




間伸びした口調で言った龍也に



「はあ?」と聞き返すと、龍也は電話越しにケラケラと笑った。






「ライブの後、酒飲んだら寝ちゃったんだよ。しばらく俺の車で寝かしてたんだけど」



「マジ?」



「でも全然起きねぇから、梓たちは帰して俺は送ってやってんだよ」




「ご親切にどうも」






笑いながらあたしは言い、窓の外を覗く。





「もう着いたから」






龍也の声を聞くと同時に電話を切ると


あたしは玄関の電気をつけて、閉じていた鍵を開けた。









「お届けものでーす」





外から龍也の声がしてゆっくりとドアを開けると



ギターケースを肩に掛けた龍也と


眠そうな目をした快斗が立っていた。






快斗のクールな目はどこへやら……。




トロンと下がった目には、あくびをする度に涙が浮かんでいる。




龍也のジーンズの後ポケットを摘んで、フラフラしている快斗は



ちょっと女の子みたいで


普段とのギャップに笑いを堪えることはできなかった。






< 221 / 280 >

この作品をシェア

pagetop