煙草とキス




と、そのとき突然


世那のケータイが鳴り響いた。




ディスプレイを見た世那の表情からは、相手が誰だかすぐに分かった。







「店の中で待ってるから。じゃあね」







幸せそうな笑顔のまま


世那は電話を切った。






「今来るって、彼女」




ニコッと世那がはにかむ。






「来るって……店に?」



「デートの待ち合わせがここだから」



「デート!?」






今日の世那は、いつになくお洒落だなって思ってたら……





そういうことだったのか。





デートなんて


懐かしい言葉のように思う。




もう、あたしはずいぶん行ってない。


その言葉自体も、久しぶりに聞いた。






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