煙草とキス
「世那くんっ、ごめんねっ」
頬を赤らめ、不揃いな呼吸を整えるように胸に手をやった彼女。
小柄な体型に、艶のある茶髪。
個性的なベリーショートの髪型と、優しそうな顔立ちは、あたしの記憶をすぐに蘇らせた。
「あの……。もしかして」
彼女の正体が解って
ちょっと、してやったりな気分だ。
そんなあたしは、彼女をジッと見る。
すると、先に口を開いたのは、やはり彼女のほうだった。
「……あっ!あの、えっと…
ALICEのファンの方ですよね?」
彼女が瞬きする度に
アイシャドウがキラキラと輝く。
あたしが頷くと、彼女は一気に明るい笑顔になって、声のトーンを少し上げた。
「やっぱり!覚えて頂けたんですか!」
「北澤さん……でしたよね?」
「はい!美季です」
こめかみ辺りから流れる彼女の汗までも、キラキラッと光る。
彼女はとても、喜んでいた。