煙草とキス



「見てねぇんだ……。
オレ、今日のタイバンに出たんだよ?」





そう言って、肩を落とす世那。




あたしは不覚にも



その言葉で、やっと思い出した。







「あーっ!そうだった…。
この前、教えてくれたんだっけ」





メイと出会う前、



世那から、快斗への宣戦布告も聞いていたんだった。






言い訳になっちゃうけど




メイと出会ってしまって、世那の話がすっかり飛んでいた。






「世那、ごめん」




世那の表情を伺いながら、あたしは手を合わせて言った。





けど、世那はすぐに笑ってくれた。







「別にいーよ!どうせオレら、快斗には負けちまったし」




世那は、ケラケラと笑う。





「bitterが出て来た瞬間、客の歓声からしてオレらの時と違った。
つーか、客入りも比べらんねーよ」





そう言って唸る世那に



あたしはもう一度、今度はもっと小声で





「ごめん」とだけ、呟いた。







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