煙草とキス
────「じゃあ、出るぞ」
吸っていた煙草を携帯灰皿に押し込んだ龍也は、快斗のギターを持ち上げた。
出待ちのファンも、多数居るだろう。
それを気にしてか、龍也の前にいた梓はセカセカしている。
「ああ、悪りぃ」
龍也の手から、自分のギターを受け取った快斗は
一言、ポツリと言った。
「俺、今日は澪と帰るから」
パッとあたしの腕を掴んだ快斗は
ニコッ、とメンバーに笑いかけた。
「なんか、今日ダルいし。
出待ちファンには悪りぃけど、別ルートで帰るから」
「なんか、珍しくね?」
全く、龍也が言う通りだ。
いつも、出待ち優先にするくせに。
「まっ、そういうことだから。じゃね」
軽くメンバーに手を振った快斗に続けて、あたしは軽く頭を下げた。
「今日のライブも、最高だったよ」
メンバーの3人に、あたしはそう言った。
ひかりさんの伝言も、全部ひっくるめて。