煙草とキス





中2の頃、あたしの周りでは




何故か“星占い”が流行していた。










「最下位は……しし座!
最悪な出来事が重なって、憂鬱な気分に。
紅茶を飲んで、落ち着いてみて」






ベッドの上からテレビをつけると




普段は、滅多に見ない朝番組の、星占いがやっていた。








「澪って、しし座だよな」




「…こんなの、非科学的だよ。あたしが信じると思う?」






そう言ってテレビ画面から、目をそらす。





快斗は煙草の灰を落としながら



クスッと笑う。







「普通、かわいい彼女ってのは、占いを本気で信じて行動するもんだ」





フーッと煙を吐く快斗を、あたしは布団にくるまりながら見た。






「ごめんね、かわいくなくて~」





ムッとした顔をすると




快斗はまた、あたしを見て笑った。






「俺は、占いなんか信じねぇ女の方が好きだけど」








さりげなかった。





それでも、ちゃんと聞き取れた。




煙草の煙と匂いに邪魔されることなく。






煙草を指に挟めながら



快斗は、窓の外をジッと見つめる。





そして、ポツリと呟いた。







「……星なんか、見えねぇのにな」








< 69 / 280 >

この作品をシェア

pagetop