煙草とキス
中2の頃、あたしの周りでは
何故か“星占い”が流行していた。
「最下位は……しし座!
最悪な出来事が重なって、憂鬱な気分に。
紅茶を飲んで、落ち着いてみて」
ベッドの上からテレビをつけると
普段は、滅多に見ない朝番組の、星占いがやっていた。
「澪って、しし座だよな」
「…こんなの、非科学的だよ。あたしが信じると思う?」
そう言ってテレビ画面から、目をそらす。
快斗は煙草の灰を落としながら
クスッと笑う。
「普通、かわいい彼女ってのは、占いを本気で信じて行動するもんだ」
フーッと煙を吐く快斗を、あたしは布団にくるまりながら見た。
「ごめんね、かわいくなくて~」
ムッとした顔をすると
快斗はまた、あたしを見て笑った。
「俺は、占いなんか信じねぇ女の方が好きだけど」
さりげなかった。
それでも、ちゃんと聞き取れた。
煙草の煙と匂いに邪魔されることなく。
煙草を指に挟めながら
快斗は、窓の外をジッと見つめる。
そして、ポツリと呟いた。
「……星なんか、見えねぇのにな」