煙草とキス
「馬鹿げているのは、おまえだ。
おまえが間違った生き方をしているせいで、それが良だと、結も思ってしまっている」
「頼むからこれ以上、大切な娘を引きずるな! おまえとはもう、縁を切ったも同然だ」
…………あたしはもう、何も言えない。
“大切な娘”
結のことはそう言うのに
あたしは、“おまえ”だ。
別に、嫉妬してるわけじゃない。
もう親なんて、どうだっていい。
心の中は、そんな気持ちで一杯なのに……
何故か、すごく胸が痛くて
喉の奥が、鈍く痛んで
父の言葉は、あたしの涙腺を壊した。
「もう…、電話してこないで!!」
かすれた声で、あたしは叫んだ。
でも、もう耳に入ってくるのはケータイの電子音だけで
電話はとっくに、切れていた。
小さい頃から、何故かあたしを嫌っていた両親。
両親にとっては初めての子供で
普通は、可愛がるはずなのに…………
いつもあたしは、邪魔者扱い。
両親に『冷たい子供だ』と言われ
まるであたしには興味無し。
だけど、後から生まれた結には、異常なほどの愛を注いだ。
両親と結の関係は、絵に描いたような家族像で
その姿を後ろから見てきたあたしは
『こいつらと家族なんて嫌だ』と、常に絶縁を望んでいた。