煙草とキス
なのに─────………
どうしてなの?
縁を切ったも同然だと言われただけで
どうして、涙が止まらないの?
こんな言葉より、酷いことを言われたこともある。
それでも、
泣いたことは無かったのに………。
あたしは子供のように、声を上げながら泣いた。
鈍い音を起てて手から落ちたケータイも
そのあたしの手も
溢れる涙で 濡れていた。
「……澪、落ち着け」
涙で濡れた手が、小刻に震える。
そんなあたしの体に触れたのは
快斗の温かい腕と、優しさだった。
「澪、泣くなっ。いいから落ち着け」
「…嫌っ……。もう…やだ……」
快斗は、親以上にあたしのことを
よく知っている。
あまり泣かないあたしが、大きなショックを受けたりすると
発作のように、落ち着きを失くして震え始めることも分かっている。
特に………………家族のことになると。
「もう、親のことは考えなくていいから」
快斗はそう言いながら
グイッとあたしの頭を、胸に引き寄せた。
あたしは、顔を快斗の胸に押し当てながら、叫ぶように泣く。
快斗の体を、もの凄い力で抱きしめていたのに
快斗はずっと 優しく包んでくれていた。