煙草とキス





─────目を覚ますことができたのは





日が深く沈んで



大粒の雨が、風と共に窓に吹きつける音のおかげだった。








快斗に抱かれながら



あたしは眠ってしまったらしい。







あたしの横で、そっと優しく添い寝する快斗の寝顔は





なんだかとても、愛しくて。




ほんのり香る快斗の煙草の匂いが、自然とあたしの心を落ち着かせた。










数分後



隣の快斗を起こさないように、静かにベッドから降りると




ソファ近くのテーブル上に、何故かティーカップと紅茶のパックが置かれていた。






それを見た瞬間



あたしは、朝の星占いを思い出した。






「快斗…………」







枯れたはずの涙が、あたしの目から流れる。







だけど、何故かその涙は温かくて




あたしの手や頬に触れても、異様なほどに温かかった。











────このときは、その涙の温かい理由なんて、理解してなんかいなかった。





でも、今なら分かる。







これが初めて流した




温かい涙だったから──────









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