煙草とキス
「……会ったけど…?」
『何かあったの?』
そう聞こうとまた口を開くと
世那の声で、あたしの言葉は遮られた。
「それ、快斗知ってんの?」
世那の声のトーンが、少し低くなった。
そして、そんな世那の声に、あたしは妙な胸騒ぎを覚えた。
「…うん、知ってる」
あたしがそう言うと
電話の向こうからは、ため息の漏れる音が聞こえた。
それを聞いたあたしは
もう、世那が何を思い詰めているのかを知りたくて
いてもたってもいられなかった。
「ねぇ、世那何かあったの?」
「………澪ちゃん、聞いてないんだ?」
「何が? あたし、分かんないよ」
もったいぶるような世那に
少し苛つきながら、聞き返す。
すると、ようやく世那が、何かぼやきながらも話し始めた。
「快斗、澪ちゃんからメイの事を話されたとき、知らないって言ってた?」
「うん。知らないって言ってた」
あたしがオウム返しすると
世那はしばらく間をあけてから、また口を開いた。
「それ………快斗の、演技だよ」
世那のその言葉が、あたしの頭の中をぐちゃぐちゃにした。