煙草とキス
でも、もうその涙の理由も、なんとなく分かる気がする。
そして…………
「龍也なんて、雲の上の存在だったんだよね……。ファンの域を超しすぎた…」
ひかりさんのため息は、
小刻みに震えていた。
「ホント、馬鹿だよね。
龍也に片想いして、勝手に龍也を諦めるって、泣いたりしてさ……。大人気ない」
「恋をするのは……自由ですよ?」
「……そうだよね。
けど、もういいんだ。元彼と、また向き合って頑張ってみようと思う」
冷たい壁に、頬をあてる。
そしてあたしは、目を閉じた。
「彼が働く大阪に……もう、行くんだ」
あたしは、ゆっくりと目を開けた。
もう、何も言うことは無いし、聞くことも無いと思う。
もし、まだ龍也に想いを寄せていて
元彼との復活をどこかで迷っているのであれば
あたしは、応援も協力もする。
だけど、ひかりさんはもう決めた。
新しい道を、歩むのだと。
それをあたしは………見送るだけだ。
「ひかりさんの決断だから、あたしはそれを見守るし、応援もします。
だから……些細なことでも、お互いに話したい」
「澪ちゃん……ありがとう…」
震えるひかりさんの声に
あたしの瞳は、潤み、揺らいだ。