居 候 天 使
1.
1.天使だよ
「おかえり」
例えば。
そう、例えば。
1人暮らしを始めて約一ヶ月のこの部屋に帰宅し、20代前半くらいの男と、セーラー服姿の女の子が、我が物顔でくつろいでいるのを発見したとしたら。
俺は一体、どんなリアクションをとればいい。
更には、漫画雑誌を読みながら投げかけられた、一切面識のない男からのこの「おかえり」に、俺はなんと返せばいい。
まるで家族のように「ただいま」と返し、その直後に「誰やねん!」とノリつっこみを浴びせるのが正解なのだろうか。
否、そんなわけがない。
「おい、お前もおかえりぐらい言えよ。」
テレビゲームに夢中な女の子の方は振り向きもしない。
そんな彼女に対して、男はソファーに寝転びながら、俺への「おかえり」を言わせようとするも、彼女は全く応じる気配を見せない。
なんなんだ、これは。
色々とつっこみどころは満載だが、とりあえずはこいつらが何者なのかということが最も気になる。
見る限りでは無害そうだが、他人の家に勝手に侵入し、主を目の前にしてもこの態度という点で普通じゃないことは明らかだ。
「またシカトかよ。
ごめんなぁ、こいつ極度の照れ屋さんなもんで。」
落ち着け。
そうだ、落ち着くんだ。
冷静になれ。
とりあえず訊け。
訊くんだ。
お前らは誰なのか…
はい、せーのっ!!
「あの、…誰ですか、あなた達」
漫画をめくる音、ゲームのBGMがやたらと大きく聴こえる。
何なんだろうか、この緊張感。
一体こいつらはどこのどいつで、何のためにここに―――?
「俺達?俺達は天使だ」
男は言い放った。
まるで、「血液型?A型だよ」とでもいうような感覚で言いやがった。
ダメだ。
完全に俺のことをなめ腐っている。