居 候 天 使
「天使つってもアレだよ?
そっちの方の天使じゃなくて――」
「おい、不法侵入って言葉知ってるか?」
何が天使だ。
ふざけるのもいい加減にしろ。
どこの世界に上下スウェット姿のだらしない天使がいるんだ。
羽はもちろん、天使の要素の一欠けらもないくせに。
世界中の天使に謝れバカヤロー。
「おいおい不法侵入ってお前、そりゃないんじゃないの?
こっちはお前のこと幸せにするために、わざわざ天界から来てやったんだぜ?」
こいつ、正気か?
それとも、ただ俺のことからかってるだけか?
「別に俺はお前みたいな危ない奴に幸せにしてもらわなくても、今のままで十分幸せですから」
「いやお前全然幸せじゃないし。超不幸だし」
マジで何言ってんだ、こいつ。
俺が幸せかどうかなんて、お前が決めることではないし。
つか、なんで俺軽く犯罪者なこいつに不幸呼ばわりされなきゃなんないわけ?
「話、ズレてる」
ゲームにはもう飽きたのか、テレビの電源を切り、セーラー服の彼女はようやくこっちに顔を向けてくれた。
「わたし、コハク。これは、シキ。あなたは、エン」
無表情な顔と淡白な声で、自分の名前と男の名前を紹介してくれた彼女。
でも、
「ちょっと待て。俺の名前は園田薫だ。」
「そう、だからエン。わたしがつけたの」
あだ名ってことか?
それにしても意味が分からない。
分かったのは、この2人、両方とも話が通じないということだけだ。