居 候 天 使
「あーなるほど、園田の園を音読みして、エンな。よかったなー、エン、名前つけてもらって」
「不法侵入者にあだ名なんかつけてもらう筋合いはない」
「おいおい、そんな言い方はねぇだろーが、天使様に向かって」
この期に及んでまだ天使を名乗るのか。
もう、分かった。
こいつらと話していても時間の無駄だということが、はっきりと分かった。
とりあえず出て行ってもらおう。
警察を呼ぶのは色々と面倒だ。
ここは穏便にことを済ませよう。
「もう分かりました。あなた達は天使様で、俺を幸せにしたいと、そういうことですよね?その気持ちは大変ありがたいんですけど、俺は自分の幸せは自分で掴み取るものだと考えておりますので、そのようなお気遣いは結構です。ですから、もうお帰りくださいませ、天使様」
なんで俺がこんなこと…
「今、エンの幸せ世界ランクは775835856位」
うん、俺の話聞いてたかな、コハクちゃん。
そして、俺の幸せ世界ランク、まぁまぁいい感じの順位だと思われるんだけど。
「エンを世界一幸せにする。
それがわたし達の試練」
真っ直ぐと俺を見る彼女の瞳が、とても嘘をついているようには見えなくて。
世界一幸せにするって、そんなプロポーズみたいな言葉に、一瞬ドキッとしたことを悟られないように、俺はまたもっともらしい言葉を探す。
「し、試練って、そんなの勝手に言われたって困るよ」
「俺達だってお前のこと世界一幸せにできないと困るんだよ」
今度は男の方が口を開く。
確か、シキとか言ったな。
「困るってなんで」
一万歩譲ってこいつらが本当に天使だったとして、なぜ俺なんだ。
なぜ俺を、よりによって世界で一番幸せにしなくてはならないんだ。