居 候 天 使
「お前を幸せにしないと、生まれ変われねーからだよ」
「………生まれ変わろうと思えば、自分の努力次第で、人はいくらでも変われると思いますけど」
「いや、そういうイメチェンみたいな感じじゃなくて、マジの方」
「なんだよ、マジの方って。つかお前らいい加減にしろよ。天使だの、生まれ変わるだの、非現実的なことばっか言って、一体何がしたいんだよ!」
話が通じなさすぎてイライラする。
なんで俺がこんな奴ら相手にしなきゃなんないんだ。
「天使だよ、本当に」
怒るでもなく、悲しむでもなく、コハクがそう静かにそう呟いた。
「…え」
その直後、コハクの足が床から少しずつ少しずつ、でも確実に、離れていった。
つまりは、浮いている。
ふわふわと室内を浮いてみせるコハク。
羽もないのに、浮いている。
「信じた?」
上から俺を見下ろしながら、コハクは尋ねる。
「う、嘘だろ…」
非現実的なものは信じない。
だけど、実際に自分の目で見たものは、なかなか疑いようがない。
だって彼女は確実に浮いている。
「ほ、本当に天使なのか?」
「さっきからそう言ってんだろ」
男の方、シキに言われるとなぜだかコハクの10倍はムカつく。
「いや、待て。だったら羽はどうした。本物の天使なら羽くらい持ってるだろ」
そうだ、天使といったらやっぱり羽だ。
ただ浮くことができるという点では、魔法使いとか、超能力者とか、天使以外にも可能性がある。
もちろん、魔法使いも超能力者も信じがたいのには変わりはないけど。