居 候 天 使
「エン」
混乱する俺に、コハクが天井から話しかける。
「わたしとシキは、もともとは人間」
もともとって…、じゃあ今は人間じゃないの?
天使?やっぱり天使なのか?
確かに彼女は浮いているけど、だからって、そんなに簡単に信じられないし。
でも…
「でも」
スーッとコハクが降りてくる。
そして、石膏でできたような無機質なその顔が、僕の目の前で言う。
「死んじゃった」
―――し、死んじゃった?
だったら、天使っていうより、
「幽霊じゃん!」
そうだ。
幽霊だから浮けるんだ!
……って俺、幽霊は信じるのか?
否、ただこのシキって奴が天使だなんて絶対に認めたくなくて、幽霊ならまだ許せるというだけだ。
「フンッ、やっぱ人間って、馬鹿だな、コハク」
「ばか」
……なんっだよ、こいつら。
自分達が不法侵入者ということを忘れてないか?
やっぱこいつら天使じゃねーな。
人間を鼻で笑う天使なんて聞いたことがない。
「オイ、そこの愚かな人間よ、よく聞け」
「誰が愚かな人間だ、このメルヘン馬鹿が」
「俺達は確かに死んでるが、幽霊じゃない。天使だ。
いいか、天使っつーのはな、生まれ変わるための試練を与えられている者のことだ。
幽霊っつーのは、その試練に失敗して、未だにこの世を彷徨っている者のこと。」
生まれ変わるための試練?
それって…