優しい君に恋をして【完】
●優しい人

通学電車






朝というのは、どうしてこうも時間が経つのが早いのだろう。


同じ一分でも、電子レンジの前で待つ一分は長いのに、


登校前の一分はあっという間。



「あと5分早く起きればいいのよ……まったく……


高校初日に遅刻なんてしたら、先生に目をつけられちゃうわよ」



「わかってる……わかってるって!」



お母さんのその言葉、これで3回目だよと、心の中で突っ込みながら、

玄関脇の、姿見で全身をチェックした。


真新しいベージュのジャケットに腕を通し、


深緑のタータンチェックのスカートの後ろの折り目を直して、


スカートと同じ色のリボンの向きをまっすぐにした。




「いってきますっ」



玄関から飛び出そうとした時、


「帰りにちゃんとピアノのレッスンに行ってよ。



桜木先生そろそろ辞めちゃうかもしれないから……」













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