優しい君に恋をして【完】
「え.....まぁ、そんなことはいいから。
レッスンを始めよっか」
先生は、練習中の曲のところで楽譜を開き、
ぎゅっぎゅっと、楽譜を押さえつけた。
「かっこいいでしょ?絶対にかっこいいと思う!
何している人?どこで出会ったの?」
「あすかちゃん。始めようね。
はい、弾いてくださいね」
優しく笑いながら、先生に言われて、仕方なく鍵盤に指を置いた。
「教えてくれたら、弾くー」
先生は、少し困った顔をしたけど、また微笑んだ。
「わかった。旦那さんとはね、中学校の同級生だったの」
「えー!!すごい素敵!!
で、何している人?」
先生は、少し考えていた。
言いにくいのかな......
先生は、少し小さな声で答えた。
「お医者さん。ほら、始めよう。時間なくなっちゃうから」
「お医者さん???」
「あすかちゃん、教えたら弾くって約束でしょ?
はい、聞かせてね」
私は、仕方なく、指を動かし、鍵盤を優しく押した。