優しい君に恋をして【完】
猛ダッシュで自転車を引いて、
優の前にキキィーとブレーキをかけて止まると、
優は噴き出して笑った。
そして、ゆっくりと私の手の上からハンドルを掴んできた。
そっとハンドルを離すと、私は前かごに入れた自分のバッグを取ろうと手を伸ばした。
すると、優がその手を止めて首を振った。
《かご 重くない?》
私がそう聞くと、優は手を離して 《大丈夫だよ》 と答えた。
そしてまたハンドルを掴んで、ゆっくりと自転車を引きながら歩き出した。
私はちょっと走って、優の隣まで行くと、
優がちらっと私を見て優しく微笑んだ。
そしてゆっくりと一緒に歩き出した。
行き交う車のエンジン音
通り過ぎていく人の話し声
騒がしい駅前通り
でもきっと優は今、静かなんだ......
優の隣から顔を覗き込むと、
夕日が背中からあたって、
栗色の髪が明るく輝いていた。
ずっとこの人と一緒にいたい
ずっとそばにいたいと、
隣で歩きながら、
心の中で、そう強く願った。