優しい君に恋をして【完】
優は少し俯いてしまった。
『優くんは、同世代の聞こえる子たちを、
避けているような気がしていたの』
桜木先生の言葉を思い出した。
もしかして優は、嫌なのかもしれない……
ハンドルを掴んでる優のカーディガンの袖を少しだけ引っ張ると、
優が顔を上げた。
「ごめん……」
私が手話を使わずに謝ると、優は笑いながら首を振った。
そして《185 》と、口を動かさず手話だけで答えた。
「185センチ……みたい」
私がそう言うと、後輩達は目を見合わせて、
何も言わなくなってしまった。
耳のことで引いちゃったのかな......
でも、そんな子達じゃないと思ったんだけどな……
「じゃあ......」とその場を立ち去ろうとしたら、
「あの……」と呼び止められ、立ち止まった。
「【大切にしてください】って、
手話でどうやるんですか?」
えっ......
「大切に………してください」
私が教えると、
後輩は何度かやってみてから、
優の方を向いた。
そして、私を指差した。
「遠山先輩を………大切に してください」